親知らず(hokuto.m) ページ12
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「歯が痛い」
「正しくは抜歯窩ね」
「は？うざ」
「…知識を教えてあげただけでしょうよ。手負いの獣なの？あなた」
それに、もうないじゃん。親知らず。って。
知ってるよ。そんなのを数時間前に身をもって経験したんだから。
「すごい音だったんだよ…歯を削ってる時焦げたみたいな匂いもした。怖くておしっこ漏れそうだった…」
「…漏らしたの？」
「例え！…ぎーって服握ってたら力抜いてねーって歯医者さんに言われた。けどね、無理でしょ！怖いんだから！」
「子どもみたいだね、A」
「………隣で治療してる男の子はさ、お母さんに付き添って貰ってて羨ましかった」
「なぁにそれ。あなた何歳？」
今思い出しても怖い。麻酔を打たれてる時の鈍い痛みとバキッという歯が砕ける音。呆れたように笑う北斗が優しく頭を撫でてくれる。
「…北斗のバカ。ばかばかばか」
「もー。どうしたらいいの、どうしてほしいの」
自分の頭に置かれていた手をぎゅーっと力任せに握ってやる。痛いって、Aって言うけどその声はどこか嬉しそう。痛いのに嬉しいってこいつはどえむなのか。
「……ついてきてっていったのに。」
「……あれまじだったわけ？」
「まじだよ。おおまじ。席に座ってさ、手を握っててほしかったんだよ。」
「だからそんなにぶすくれてるの？」
「………悪い？」
我ながら恥ずかしいよ、でも本当に怖くて。
終わったあと無性に北斗に会いたくて泣きそうになったんだよ、
バツが悪くて北斗の手を放り投げてそのまま顔を膝にうずめた。なんにも反応がない。
……無視は流石にひどい、そう思って顔を上げると口元に手を当てて笑いを堪える北斗
「ごめ、…ふっ。まって。笑わせないで」
「笑わせるようなこと！いってない！」
「いや、…ぶふ。もー。何歳？本当に」
堪えることを諦めたのか声を上げて笑われる
むかつく。可愛い彼女がこんっなに弱ってる時に大爆笑なんてする？ふつー
「…北斗の親知らずが痛む呪いかけたからね」
「残念。俺はもう抜歯済みだから」
「……私はまだあと2本あるのに？」
「俺も4本抜いたからね。同じおなじ」
「まって。すっごいむかつく」
またゲラゲラと笑い出す。くそ。こんなの負け戦だ。右側顎ら辺はずっと痛いままだし、北斗はこんな調子だし。…無視してやろ、こんなやつ
笑い転げる北斗に背を向けてまた膝に顔を埋める。体育座り、なんていつぶりだ
「…A？」
「おーい、Aちゃん？」
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作者名：まめこ
| 作成日時：2022年9月17日 0時
