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機嫌をとるような優しい声色
更に無視を続けると、つん、と脇腹をつつかれた
「うえ」
「色気のない声だねー、Aちゃん」
「……痛い」
「え、なにそんなに？」
「北斗が笑うし、歯はずっと痛いし馬鹿にされるし、…嫌いほくとなんて」
「え、ごめん。すみません。痛み止め飲む？なんかゼリーとか買ってこようか？」
ざまあみろ。体育座りのまま、途切れ途切れのか細い声は北斗を騙すには十分だった。
「…プリン、あと苺」
「それだけでいいの？あとなんかほしいのないの？」
「…苺は高いやつね」
「………Aちょっとこっち見て」
「………泣いてるからむり」
そう答えると直ぐに背中から感じる暖かい重み。
…むしろ潰されそう。
「ほく、おも」
「……嘘泣きね、」
「……さっきまで泣いてた」
「もー。ほんっとに子どもなの？俺は何歳児を彼女にしてるんだろうね？」
「…彼女の歳もわかんないの？耄碌した？」
憎まれ口にかえってきたのはため息ひとつ。
「……イチゴとプリンね。」
「うん。高いやつね」
「馬鹿舌の癖に生意気じゃない？」
「……また泣くよ」
「…だめ。心臓に悪いんだよ」
「大好きすぎない？わたしのこと」
「……まあね」
思いの外北斗にとっては私が泣くことはダメージが大きいらしい。嘘泣き、とわかってても。
･
「それで？いつ？」
早々に帰ってきた北斗の手には粒の大きい少しお高めの苺とケーキ屋さんのプリン。
苺をそのまま食べようとすると「洗いなさい」って止められて。結局北斗が透明なお皿にヘタまでとって苺を盛り付けてくれた。
「いつ、ってなにが？」
「……次の抜歯。」
「えーっとね。１ヶ月後？反対側の方が神経に近くて腫れるかもって既に脅されてる…」
「脅し、って。Aのこと安心させるために丁寧に説明してくれてるんでしょうよ」
「……はーい。」
「何時なの、予約」
「11時、だけど。なんで？」
「は？Aがいったんでしょ」
「……なにを？」
「ついてきてって、」
恥ずかしそうに私の苺をひとつ、つまみ上げて北斗がそういった
「……北斗、ほんとーに私のこと好きだね」
「悪い？…なに、その顔」
だらしない顔をしている、きっと。
愛しいものをみるみたいな目といつもより更に優しい私に触れる手。全部がぜんぶ、
「愛を体言してる、みたい」
「……Aにしては珍しく文学的表現だね、」
「一言余計だよ」
わざとらしいため息すら、そう感じてしまうんだ
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続く (更新停止中)
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作者名：まめこ
| 作成日時：2022年9月17日 0時
