陸 ページ26
あれから数日後、私は砂漠の国を訪れた。
『わざわざ来てくれてありがとう。Aさん。』
「いえ。貴方が陸さんなんですね。」
『そうだよ。』
微笑んだ陸さん。
すぐにスッと目を細めて、品定めするように私を上から下まで舐めるように見た。
うわ。
「っ。」
そういうことされるのはちょっと嫌かも。
陸さんの目、苦手だ。
なんだろう。
何かに似てる…？
それから私も少しだけ見返した。
陸さんは、いかにも砂漠の国らしい服装。
そして胸元や指には大粒の宝石がついたアクセサリー。
『まぁ、座ってよ！』
「はい…。」
向かい合って別々のソファーへ座る。
気を取り直し、それから色々お話しした。
でも。
無性に落ち着かない。
お城に入ってからずっと…無数の視線を感じるから。
何もいないように見えるのに。
何がいるの？
見渡してもほら、何もいない。
『気になる？』
「はい。」
『おいで。』
「え？きゃ…っ？！」
呼ばれたのは、私じゃない。
足元に集まってきた沢山の蛇だった。
視線を感じたのはこれ？！
足をソファーの上に引っ込める前に絡め取られた。
動くのは逆に危険。
「い、いやぁっ」
毒蛇？！
噛まれたら死んじゃう…？
冷や汗が全身から出る。
抵抗するのはやめた。
『ふふ。』
「何がおかしいんですか。」
『いや？』
陸さんが歩くと、蛇たちは避ける。
私の隣へ座った。
『Aさんが可愛らしいなと思っただけだよ。』
「はい？！」
あ…。
近くで見て分かった。
陸さんの目は、この蛇と同じだ。
「何がしたいんですか？」
『震えちゃってさ。やっぱり可愛い。』
「陸さん、聞いてますか？！」
『樹や昂秀からは気が弱めで大人しい女の子って聞いてたんだけど。結構、言葉は強いんだね。』
「な…っ！」
確かにそうかもしれないけど。
陸さんは何でもハッキリ言っちゃう人だな…。
『僕はそういう子の方がタイプだよ♡』
「そうですか…。で、私をどうするつもりなんですか？」
『うん。僕もほら、牙があるの分かる？』
確かに。
私とは違うけど。
犬歯のところが、細めの蛇の牙だ。
「あります、ね…。」
『噛んでみたいなって。』
はい？
『大丈夫。毒は少しだけにしておくからー！』
「それ絶対大丈夫じゃな、ｯ！！」
逃げ場のない私はソファーに押し付けられて、首を噛まれた。
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作者名：If | 作成日時：2022年8月7日 8時
