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それから数日後。

慎さんという王子が来た。


生憎の雨で、私の部屋でのんびりとお話することに。

ソファーに並んで紅茶を飲む。


『僕の国はビジネスが盛んです。』

「内容的にはどのような?」

『主にAI関連です。』

「人工知能かぁ。すごいですね。」


慎さんは、見た目じゃ人間だけど。


「ちょっと失礼します…。」


首を触ると冷たい。

血が流れているようには思えない。


『お気付きでしたか。さすがAさん。』

「慎さんは…。」

『はい。サイボーグです。』


袖を捲りあげて腕の関節を見せてくれた。


隠れたところに機械っぽさがあるのか。

顔はきっと本物の人間のまま。

完全な機械、アンドロイドではないんだ。

紅茶にも口をつけてたし、食事は普通なんだろうな…。


『自分の体を機械と融合させて、研究しているんです。』

「かっこいいですね。」

『そう言われると嬉しいです。』


で、問題は。


「言いづらいのですが。その…。」

『吸血ですよね。』

「はい。」


どこから吸えばいいんだろう。


『僕の言う通りにしてくれますか?』

「…。」


この時、岩谷さんの事を思い出した。


今回は、大丈夫だよね?

慎さん真面目そうだし。

うーん、岩谷さんも真面目そうとは思ってたんだけどなぁ…。

信用しないのは、それこそ失礼だよね。


「はい。お願いします。」

『では。』


肩を抱かれて、慎さんに少し凭れ掛かる体勢になった。

視線を上げるとすぐそばに慎さんの顔がある。


『目、閉じてください。』

「はい。」


『口を開けて…、舌を出して。そのままじっとしててください。』

「ん…。」


やがて口に流れ込んできた冷えた液体は血ではなかった。

でも、空腹は満たされる。

不思議だった。


『お口に合うかどうか…。』

「美味しいです。」


身体が離れて目を開けると、慎さんがハンカチで口を拭いていた。


「口移しだったんですね。」


直接じゃないけど。


『はい。初対面の女性に口付けるのは申し訳ないので。』


配慮してくれたんだ!

初めて、良い人が現れた…!

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設定タグ:ランペ , 川村壱馬 , 吉野北人   
作品ジャンル:ファンタジー
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時

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