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腰をいやらしく撫でてきた。
次を待ちきれない身体が、無意識に内腿を擦り合わせる。
「…岩谷さんっ。」
『可愛い声で呼んでくれて嬉しいです。』
腕を優しく頭上へ絡め取られた。
力任せじゃない紳士的な仕草に少しときめく。
私をじっと見つめて、舌なめずりした岩谷さん。
その熱っぽい視線のせいでグッと体温が高まった。
『A様。』
名前を囁く声に胸がぎゅっとなる。
シーツがずり落ちて露になったところへキスが落ちた。
「ん…。あっ、」
『王子たちともこのようなお戯れを?』
っ!
「えっ、その…、」
『へぇ〜。妬けますね。』
否定出来ない私を見て、察したらしい。
岩谷さんは首筋を甘噛みしてきた。
皮膚に触れた歯の感覚…。
ゾクゾクする。
吐息がかかって、チュッと吸われた。
「それ、やだ…っ。」
『A様の真似ですよ。』
吸血の…?
「わ、私のはこんなにえっちじゃない…っ!」
『でも気持ちよかったですよ。』
皮膚の下に流れる血を狙うようにぺろりと舌が這う。
身体がどんどん熱くなる。
吸われる側って、こんな気持ちなのかな…?
言い返せなくて真っ赤な顔で口ごもる。
『…もっと感じてください。』
岩谷さんに暫くの間、身を委ねた。
『A様。』
「ん…?」
目を擦る。
『ごちそうさまでした。』
「え、っと。」
太陽の下。
バラの木の陰…。
意識がはっきりしだす。
元の世界に戻ってきたことを理解した。
それから、夢でされたあんなことやこんなことを次々に思い出す。
『あれ以上一緒にいたら、最後までしちゃうところでした♡』
「えええっ?!」
『僕が欲しくなったら呼んでください。いつでも夢へ逢いに行きます。』
この身体には何の感覚も残ってない。
しかし濃厚すぎる記憶が脳裏に張り付いている。
「け、結構ですっ!」
いてもたってもいられなくて、慌てて部屋へと逃げ戻る。
窓からこっそり庭を覗くと、こちらの視線に気付いた岩谷さんが微笑んでいた。
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時