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『死にてーんか?』
「い゛っ!」
痛い!!
『色気の無ぇ声…。』
デコピンされた。
「あれ、私…?」
『どいつもこいつも正気を失うのが得意じゃなぁ。』
彰吾さんの血が美味しすぎて理性が飛んじゃったの…?
いつの間に押し倒した?
「失礼しました…。」
あたふたとソファーを降りる。
彰吾さんは首を拭って起き上がった。
「その血は…?彰吾さんって、」
『俺はアンデッドだ。』
死人か。
高値で取引されるっていう、あの希少な血なんだ…。
「初めて飲みました。アンデッドの血。」
…あれ?
彰吾さん、吸血されて気持ち良くならなかったのかな?
みんな赤くなったり、汗をかいたりするのに。
顔色が変わってない。
そういえば自分で腕を切り付けたときも無表情だった…。
「あの。私の吸血、気持ち良くなかっ…。」
いや?
わざわざ聞かなくても良いか。
咄嗟に口ごもる。
彰吾さんは複雑な表情をしていた。
『俺たちは五感が鈍い。痛覚もな。吸血くれーじゃほぼ何も感じん。』
「な、なるほど。」
知能と感情はあるのに。
「それは、寂しい…。」
『あ゛?』
その手をぎゅっと両手で握った。
「私の体温とか、柔らかさも伝わらない。」
彰吾さんは感じられないんだ。
『…。』
「切ないです。」
ね?と目で聞くと、そっぽを向かれた。
私が視線を外したら次は彰吾さんがこっちを見る。
『なんでおめぇが泣きそうな顔しとるんじゃ。』
「…感情移入しちゃって。」
パッと手を離して、彰吾さんの隣に座った。
『泣きてーのはこっちじゃ。』
「そうですよね。」
『「…。」』
二人して無言に。
沈黙が不思議と苦じゃない。
あれ?
私たち。
もしかして打ち解けてる…?
『気に入った。』
「何がですか?」
『嫁に来いA。』
「…はいっ?!」
人生で初めて、プロポーズされた。
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時