彰吾 ページ14
「助けてくださってありがとうございました。」
『まぁ、悦んどるようにしか見えなんだが。』
「…そうでしたか。」
下げた頭をさっと元に戻す。
わぁっ。
すごく嫌みったらしい。
素直にお礼を伝えたのにな…。
「それで貴方は?」
『お前の婿候補の一人。』
「え゛っ。」
王子なんだ。
って、?!?!
「んぁっ?」
『へぇ。』
急に、唇の端を指で引っ張り上げられた。
何?!
口の中を見てるの…?
ゾワッと鳥肌が立った。
気持ち悪い…!
『結構鋭い牙じゃな。』
「ッ…は、やめてくださいよいきなり…っ!」
胸板を押して突き放す。
彰吾さんは自分の指に付いた唾液を舐めて笑った。
『別にいーじゃろ。減るもんじゃねぇし。』
私の嫌がる顔を見て、楽しんでるの…?
何のために?
考えてることがさっぱりわからない。
『ほれ。』
パッと腕を差し出された。
『一口吸え。』
「〜っ!」
流石にこんな扱いは耐えられない…!
「あ、あの…っ。さっきから…っ!」
怒ろうとした瞬間。
彰吾さんはポケットから小さいナイフを取り出して、自ら腕を切りつけてみせた。
「いやぁっ?!」
『召し上がれ。』
異様な光景。
「…。」
あれ?
良い香り…っ!
流れ出て来たその血は極上の香りがする。
「っ、」
私は我を失い、夢中でそれを舐め取った。
「ふっ、はぁ…っ。」
『…。』
「んん…ッ♡」
ワインのような深い味。
臭みが無い。
こんなに美味しい血は初めて!!
『おい。』
「あぁ、…美味しい♡」
『聞こえとらんのか。』
腕からじゃ足りない。
もっと欲しい…っ!
私は彰吾さんをソファーに押し倒した。
白い肌に牙を刺す。
「ん…っ、♡」
やっぱり首から吸い取る血は格別だ。
美味しい。
本当に、美味しい。
『なぁ。吸いすぎると中毒になるぞ。』
彰吾さんの声は耳に届かなかった。
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時