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"「Aはおれのやもん」"
酔っていたとはいえあの言葉が頭から離れない。
『……朝』
何とか鬱島さん達に手伝ってもらい家に帰ってきたのは良いが、結局私はあれから一睡も出来なかった。眼を瞑る度にあのシーンが再生されてしまうのだ。
『…とりあえず起きて、朝ごはん作らないと』
家政婦として働かせてもらってるんだ、それはしっかり果たさねば。いつもより重たく感じる体を何とか起こしてベッドから出て支度を済ませる。
『…ベーコンエッグとサラダ、後はパンを焼いてと』
卵を手に取り割ろうとした時だった。
ころんと手から転がり落ちた卵。ぐしゃりと音を立てて潰れ、汚れる床。
『…あれ?』
ボーっとしてたかな。いけないいけない。
卵を拾って雑巾で床を吹く。フローリングだったのが幸いで、汚れは直ぐに取り除くことが出来た。
kn「ふぁ…、ん゛…はよ…」
『コネシマ、おはよう』
いつもより少し早くに目が覚めたらしいコネシマがお腹をボリボリ掻きながらリビングへと入ってくる。急がなきゃ。
そう思いトースターにパンを乗せようとすれば、大きな手がそれを止めた。
『?し、ま』
kn「…お前何してんねん」
『え?』
あ、今日はご飯の気分だった?だけど鮭今日ないんだよな。お味噌汁と目玉焼きになっちゃうけど、いいのかな。
そう思っていたがそうじゃないらしく、手を掴んでた彼の手はそのまま私の額に当てられた。
kn「やっぱり。熱あるやろお前」
『え』
kn「何年幼馴染やっとると思ってんねん。おら、寝るぞ」
『え、ちょっ』
止める術も無く寝室に連れ戻された私はベッドに投げられ、そのまま体温計を手渡される。
kn「薬持ってくるから測っとけ」
そうぶっきらぼうに言って扉の向こうに消えた背中を見送り大人しく熱を測る。そこには37.6℃と記されていて、思ったより高熱だと思うと同時に申し訳なさが勝った。
kn「ゼリーあったから持ってきたで。で、何度や」
『7.6…』
kn「疲れからやろうな。今日は大人しく寝とけ」
『…ごめん…っ』
熱と申し訳なさに涙を滲ませれば「そんなんええて。いつもありがとうな」と頭を撫で、コネシマはゼリーと薬を摂るまでそばに居てくれた。
『…ゼリーおいひい』
kn「なら今日の帰りにまた買うてきたる」
『ありがと…ずび』
kn「泣き止めて。情けないなぁ」
そう言うけど涙を拭う手と眼差しは、とても優しかった。
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暁 - ア"ッ...(絶命)好き!!!!!(蘇生) (9月6日 17時) (レス) @page30 id: 1fc9dc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - ええっすねぇ…^^これからも頑張ってください!応援してます! (2023年4月17日 21時) (レス) @page27 id: 387a7b214e (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 続きがめっちゃめっちゃ気になる展開ですね...!!楽しみにしてます(*´∇`*) (2023年4月15日 22時) (レス) id: 790884ee82 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 匿名様へ。コメントはちゃんと読ませて頂きました、ありがとうございます。 (2023年2月5日 0時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
心葉 - いい展開ですね(๑•ω•๑)/"♡おうえんしてます(*˘︶˘*).。.:*♡ (2023年2月2日 23時) (レス) @page25 id: 57de660b93 (このIDを非表示/違反報告)
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