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その日から私の毎日は大きく変化した。
会社はグルさんの所にヘルプと言う形でお邪魔する事になり、エミさん達は聞かされていなかったから大変驚いていて、グルさんたちが住んでる場所は動物禁止な為ショッピ君と共にご飯をあげる為毎日家へ寄っている。
「ンナァー」
『ごめんねトントン』
本当はグルさんにも会わせてあげたい。だけど彼は上の立場の人間で中々そういった時間が取れない。
『グルさんのお仕事落ち着いたら皆と会わせる時間作るらしいから、もう少し待っててね』
「にゃーん」
待ってるよ、と言うように鳴いたトントンさんの頭を撫でご飯を用意して私は家を後にするのだった。
※※
生活が変わってから二週間目の事。
元いた職場の件の同期がグルさんの密告によりクビにさせられたらしく、嫌がらせが続くようになった。
会社ではあることない事の噂を流され、無言電話が来るようになり、差出人不明の手紙が届き、人間は色々面倒だなぁとため息を吐いた。
「大丈夫なん?」
『んにゃ。平気』
犯人がわかってる以上ビクビクすることは無い。だけどストレスは溜まる一方で、顔色が少しずつ悪くなっていく私にグルさんは「本当だな?」と強く念を押した。
『皆いてくれるし、へーき』
「…お前がそう言うなら信じよう」
信じてくれた事に『ありがとう』と返して今日も仕事終わりに自宅へと戻る。玄関を通り抜ければいつも通りトントンさんが「んにゃあ(おかえり)」ととてとて出迎えてくれた。
おいで、と膝を折り腕を拡げる。茶トラの小さな体を抱き上げればお日様のような暖かい匂いと温もりに包まれ、うとうと船を漕ぎ始めた。
『温かい…けど、寝たら…ショッピ君…』
「にゃーぁ」
今日仕事で遅くなるって言ってたし、迷惑かけないためにも早めに帰らなきゃいけない。
だけど意識がふわふわしてる状態で帰る訳にもいかなくなり、結局メッセージを飛ばし迎えが来るまで自宅で眠ることに決めた。
『メッセージ送信…OK。よし、寝よっかトントン』
「にゃーあ」
戸締りも確認し抱きしめたままベッドに横になる。
早く記憶が戻りますように。
『…おやすみ、トントンさん』
「なぁう」
鼻をチョン、と合わせてから私達は互いに目を伏せた。
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名無していう名前の名無し - やばいでずぅ。目から涙がどまりばぜん…すぎでず…完璧にドンピシャ来て今も泣いてます←(嫌なコメントであれば消してください) (8月21日 16時) (レス) @page26 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 暖かくて優しくて、そのまま微睡んでしまいそうな世界を見れて、とても良かったです。いつかオマケと言う名の小話を見れたら…なんて思いますが、それはまた別のお楽しみとしてとっておきます。黒瀬様の他作品も見てみようと思います(*ˊᵕˋ*) (6月23日 19時) (レス) @page26 id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 琥珀。さん» 長文でもありがとうございます。執筆者冥利に尽きるというものです。人の心に残る作品をかけてとても嬉しいです!こちらこそ、素敵な感想をありがとうございます。励みになります^^ (2022年2月23日 11時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - 《長文ごめんなさい》これは運命では?と思いながら読んでいましたがやっぱりとても心に残る作品でした。とても良いお話ありがとうございました! (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - もう一度見たいなーって思ったんですけどその頃はまじの初心者で題名も何も覚えてなく諦めていました。ですが今日黒瀬様の作品を見ていると黒猫と赤い人を見つけ『これはもしや!』と思ってみたら僕が探していたものでした (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
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