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大きな病院に止まった車から手を引いて降ろされ手を引かれ広い院内を歩く。中々良い所なのだろう、最新式の機械やピカピカの院内に目が移りっぱなしだ。
「ちゃんと前見て歩け。転ぶぞ」
子供に言うようなそれにムッとしながら『わかってるもん』と零せば「
『意地悪』
「俺だって再会できて嬉しいんだ。これ位許されるだろう?」
『ふんだ』
「そう拗ねるな…着いたぞ」
グルさんが立ち止まったのはとある一室。個人病室らしく、そっと扉を開ければそこにはとある男性が眠りについていた。
「…。」
『………』
「トントン、Aが来てくれてぞ」
繋いだ手がそっと離れ、私は何かに導かれるかのように眠りについている彼に歩み寄る。震える手で彼の手に触れてみる。
その途端ぶわっと言葉では言い表せない様な感情が胸に溢れ、いきなり過ぎる感情の変化について行けない心は涙を零した。
『…トントン、さん』
良く撫でてくれた大きい手。あ、あの頃と違い戦いが無くなったから指タコが無い。別のとこにペンだこは出来てるけども。
『…にゃ、あ…』
起きて。昔みたいにもう一度撫でて。
"____A"
『…起きて、
思い出した。
貴方にしてもらった事も。
貴方のために頑張りたいと思えた事も。
私が眠りにつく最期の時まで傍に居てくれた事を。
思い出せたんだ。だけど、まだ足りない。
まだ思い出せない何かが胸の奥に渦巻いていた。
「…トントンはな、この世界でも俺の元で働いてくれていた」
グルさんはポツリポツリと話し始めてくれた。
この世界の彼も私同様、記憶が無かった事。
それでもきっと思い出すだろうと、他のメンバーは隠し普通に接していたこと。
「記憶は無いはずだ。だが今のAを見て確信を持てた」
『…なんの?』
「恐らく記憶が戻る条件は、前世で自分を変えてくれた人間と再会する事だ」
グルさんはトントンさん、エミさんはゾム。上げられた例に何となく納得しその手をそっと頬に寄せた。
「…トントンはな、轢かれそうなった猫を助けようとして巻き込まれたんだ」
きっと記憶は無くともお前と重ねてしまったのだろう。そう言ったグルさんの言葉に私は目を伏せた。
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名無していう名前の名無し - やばいでずぅ。目から涙がどまりばぜん…すぎでず…完璧にドンピシャ来て今も泣いてます←(嫌なコメントであれば消してください) (8月21日 16時) (レス) @page26 id: cfc3f2d0fe (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 暖かくて優しくて、そのまま微睡んでしまいそうな世界を見れて、とても良かったです。いつかオマケと言う名の小話を見れたら…なんて思いますが、それはまた別のお楽しみとしてとっておきます。黒瀬様の他作品も見てみようと思います(*ˊᵕˋ*) (6月23日 19時) (レス) @page26 id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - 琥珀。さん» 長文でもありがとうございます。執筆者冥利に尽きるというものです。人の心に残る作品をかけてとても嬉しいです!こちらこそ、素敵な感想をありがとうございます。励みになります^^ (2022年2月23日 11時) (レス) id: 3a76da62a7 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - 《長文ごめんなさい》これは運命では?と思いながら読んでいましたがやっぱりとても心に残る作品でした。とても良いお話ありがとうございました! (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
琥珀。 - もう一度見たいなーって思ったんですけどその頃はまじの初心者で題名も何も覚えてなく諦めていました。ですが今日黒瀬様の作品を見ていると黒猫と赤い人を見つけ『これはもしや!』と思ってみたら僕が探していたものでした (2022年2月23日 2時) (レス) id: 0b0b8f154b (このIDを非表示/違反報告)
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