39. ※ ページ40
「Aさん」
『うん?』
「お腹空きました」
『へぇー………え?』
髪の毛も洗って濯ぎ終わり、後は上がって乾かすだけ。そう思った頃に目の前のショッピはそう言って目を伏せたまま私の手を掴んで正面に引き寄せた。
『わぁ゛っ?!』
「ねぇ、いいですか?」
『わーっ!タンマタンマ!』
湯で濡れた彼の体と雫の垂れる茶色の髪の破壊力は凄まじく私は狼狽しながら『待て』を叫ぶ事しか出来なかった。だけど目を伏せたままの彼は本気らしく、ぺろりと唇周りを舐めては鋭く白い八重歯をちらりと覗かせた。
「…ダメですか」
瞼を持ち上げ見えたアメジストは少し濁っていて溶解液の影響を物語っていた。
彼は普段から血を求めて来たり私を守る以外最低限の接触をしようとはしない子だった。恐らくだが目の怪我の事もあり早く治したくて血を求めているのだろう。
『…わかった、いいよ』
「本当ですか」
『いいけどその…腕、離して…近い…っ』
そう赤い顔でお願いすれば「はーい」なんてすぐ手を離して目を伏せ直すショッピ。え、実は遊ばれてる?実は見えてる?
なんて思っていれば大きな手が首の横に添えられぺろりと薄い下が皮膚の薄い所を柔く撫でた。
「んじゃ、頂きます」
『っい゛…!』
軽くかぷ、と軽く食まれる感覚の後に牙が皮膚を突き破り熱くなる感覚に身を強ばらせる。その後すぐ牙が抜かれ、座れる感覚に脳がびりびりと痺れ脚から力が抜ければ彼の体が私を抱き留めた。
『ん、ぁ…っ』
「痛かったらすみません」
『平気、だよ…っん…』
ちゅ、ぢゅ、と吸われる度に体がびくびく震える。まるで私の体じゃないみたいで、刺激に熱くなる体が嫌になって涙で滲む瞳に目を固く瞑った。
「…そんなに怖がらんでも平気ですよ」
震えていたらしい私の手を優しく握って腰に回された腕が私を引き寄せ胸に引き寄せられる。彼の素肌と私の服越しに聞こえるドクドクという音に心音はさらに加速していった。
これ、私の心音じゃない…
「…俺やって緊張してるんすから」
『え』
「…はぁっ。もう充分飲んだんで、これくらいで大丈夫です」
ご馳走様でした、と体を離してくれたショッピはゆっくり瞼を持ち上げアメジストの瞳を覗かせた。
悔しいけど彼には一生勝てそうにない。
タオルで茶色の猫っ毛を優しく撫でながらため息を吐いた。
(てか猫の姿で洗えば良かったじゃないっすか)
(…あ゛っ)
(Aさんってたまにアホですよね)
(うぅ…)
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まる(プロフ) - 続編あるのちゃんと見てなくて、「あとがき」で心臓止まるかと思った…その後の安心感ったらありゃしない…ww 続編見てきます! (2023年4月11日 2時) (レス) @page50 id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
お月様 - うわ〜〜!推しが守ってくれるってヤバイよ!次の章も楽しみにしてます! (2021年3月12日 17時) (レス) id: b347abc4d4 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ@絶望少女です。(プロフ) - ねぇ…推しが尊いんですが!?どうしたらいいんだよォォォォォォォォォォオ!!・゜・(つД`)・゜・ (2021年3月6日 17時) (レス) id: a5be711894 (このIDを非表示/違反報告)
海猫0126 - こんばんは!小説面白かったです^^これからも投稿がんばって下さい! (2021年3月5日 20時) (レス) id: ecd79149f7 (このIDを非表示/違反報告)
Rin - ちなみに初見です。好きです。() (2021年2月28日 0時) (レス) id: ee43a6ccd3 (このIDを非表示/違反報告)
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