黒瀬の短編置き場【d!】 (ページ7)

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「子供やから冗談やと思った？」
『そんな、事は…』
「なら俺の想い、受け入れてくれるんよな？」

少しずつ距離をつめてくる彼から逃れようと顔を逸らす。まさか本当に覚えてるなんて正直思っていなかった。とりあえず整った顔が心臓に悪いので近づけるのをやめて欲しい。

『か、顔近い…っ』
「なぁ、俺…本気なんやけど」

耳元でそう囁かれゆっくり彼の目を見る。
あの日と同じ翡翠の瞳。だけどその目はあの時にはない、真っ直ぐな光が宿っていた。

「俺な、Aの事が好きや。昔からずっと、1日たりとも忘れた事なんて無かった。ずっと側にいて、大切にしたいんや」

彼の真っ直ぐな言葉に顔を真っ赤に染める。まさかそこまで自分の事を想っていたなんて。嘘をついた過去の自分を殴りたい。

「…Aは？俺の事、嫌い？」
『…そうじゃ、ない。ただ、その…け、結婚は、まだ、早いと思う、の…』

仲良くなったのはあの1ヶ月だけ。今の私達をお互いは知らない。だったら結婚よりかはまずはお付き合いしてからの方が正しい手順というものだろう。

『だ、だからね…？結婚はちょっと…』
「なら、お付き合いならええんか？」

ズイ、と身を乗り出してくる希君。

「好きやでA。それだけじゃアカンの？」

純粋な彼の気持ちを蔑ろに出来なくて

『…わかった……』
「ホンマに？！よっしゃー！」

嬉しさのあまり抱きついてきた希君に頬を染めながらもされるがままになる。この純粋さ、恐ろしいなぁ…なんて、思いながら。

「大好きやでA！」
『…うん』

ゆっくり、これからお互いの事を知っていこう。
手を繋ぎながら、私達は夕日の差す道を仲良く歩き始めた。

『…そう言えば希君、』
「長いし他人行儀やから、ゾムって呼んでや」
『…ならゾム、どうしてここに？家はどこなの？』
「大学がこっちなんよ。家は○○ってマンションの、302号室やで」
『…えっ？隣？』
「え？マ？」

神様、イタズラが過ぎませんかね。

end..?
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