黒瀬の短編置き場【d!】 (ページ4)

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背中をポンポンと優しく叩かれる感覚にゆっくり意識が覚醒する。見上げれば見覚えのある青いニット帽と、コバルトブルーの瞳が私を見つめていた。

『…猿山、先生…』
「久しぶりだな。元気にしてたか？」

ニッといつものように笑う先生の姿に涙が頬を伝う。
また会えた。先生に。

涙をポロポロ零しながらシャツを握り締めれば先生は困ったように笑いながら頭を撫でてくれた。

『ひっく、ひっく…せん、せぃ…っ』
「おーめっちゃ泣くなぁそんなに嬉しかったん？」
『はい゛ぃ゛っ゛』

涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになった私の顔をハンカチで優しく拭ってくれた。優しさもあの頃のままで、懐かしさでまた涙がポロリと落ちた。

「ったく…そんなに寂しかったんか？」
『はい…』
「…そっかぁ」

先生は優しい眼差しで私の頭を撫でる。私は先生の前で大泣きしてしまったことが今頃になって恥ずかしくなってきて、俯いて顔を隠した。

「まあ、それはいいとして…A、お前どうしてここに来た？」
『…自分で願って、来ました』
「っ、お前どうして…」
『先生と離れたくなかったんです』

シャツを握ったまま見上げれば先生はため息をついて私の背中に腕を回した。

「大人をからかうんじゃない」
『本気です』
「…はぁ」

全く引く気が無いとわかったのか、先生は盛大に溜息をつきながら私の顎に手を添えて持ち上げた。

いつもと違う雰囲気に、心臓がドキドキと高鳴った。

「まあ、ここからもう出れないからな…」

先生の言う通り、封印されているこの場から出る事は二度と叶わないだろう。

それでも構わない。
大好きな先生と一緒だから。

「___本当に、いいんだな？」
『いいの…先生がいない未来なんて、要らない』
「…馬鹿だなぁ、お前は」

ふにゃりと眉を下げて笑った先生はゆっくりと顔を近付けてくる。私もそれにつられゆっくりと瞼を閉じて、唇に触れた柔らかい感触に頬を赤く染めた。

「ん、可愛い」
『…子供ですか』

頬を膨らませてそう言えば先生はいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

そんな所も好きだから、良いんだけどね。

とある学校の小さな神社。
そこには1匹の鬼と一人の少女の魂が眠っていると言われている。

end.
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