黒瀬の短編置き場【d!】 (ページ3)

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最後のHRを終えてクラスの皆は思い思いに仲の良い友達や担任の先生と写真を撮ったり卒業アルバムにメッセージを書きあっていた。

私も仲の良い友達と挨拶を一通り済ませ、何となく1人になりたくて教室を抜けて1人神社の前へと抜け出した。

神社には誰もいない。
そう、誰も。

『…せん、せ…』

境内に足を踏み入れ、奥にある小さな社の前で立ち止まる。扉の隙間から覗けばあの猿の人形が飾られていた。

『…先生。私ね、今日卒業するんだよ』

言葉は返ってこない。それでも私は言葉を続けた。

『もうね、ここには来なくなるんだ。先生寂しがり屋だからね、言っておかなきゃって思って』

脳裏にチラつく姿に、涙が滲んだ

『中学生になるんだよ？あっという間だね』

___貴方が「おめでとう」と言ってくれるんじゃないかと思って

『だからもう、お別れ___』

そこまで言って、震える唇は言葉を紡ぐのを止めた。

___本当にこのままでいいの？

___このまま、サヨナラでいいの？

___…本当は嫌だ。

扉に掛けていた手をぎゅっと握り込む。
この社は願いを叶えてくれるもの。

___だったら…

___私の願いも…叶えてくれる…？

あの日ゾム達が助けてくれた私の命。
ごめんなさい。私はそれを無駄にしてしまう。

離れたくないの。私。

『…皆、先生。……ごめんなさい』

___神様、お願いします。

___先生に会わせてください。

___…一緒にいたいです

そう、願った刹那。
奥にあった人形の目が光った気がして、社の扉がゆっくりとひとりでに開いた。まるでおいで、とでも誘うかのように。

『…せん、せ…』

社に踏み入れ、そっと人形に額で触れる。
その瞬間に微睡みが私を襲った。瞼はどんどん重くなっていき、起きていられなくなる。

「___馬鹿だなぁ、Aは…」

意識を失う直前に、先生の声が聞こえた気がした＿＿

※※

「…A？」
「おーいAー？どこやー？」

仲良しメンバーで写真を撮ろうとAを探しているゾム達は神社へと足を踏み入れる。そこにはAの姿はなく、彼らは途方に暮れた。

「おらんなぁ…先に帰ったんかな？」
「んなわけないやろ。…ん？これって…」

ゾムが足元に見つけたのは、Aが身につけていたお守りだった。その紐は不自然に焼き切れていて、それは社の前に落ちていた。

「…A……？」

お守りを手に、ゾムは社の前に立ち尽くした。

＿＿＿＿＿この日、1人の卒業生が姿を消した。

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