黒瀬の短編置き場【d!】 (ページ20)

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ずっと私の涙は止まらなくて。だけどゾムは何も言わずにただそばに居て、私を抱きしめて背中を何度もぽんぽんと優しく叩いてくれていた。

ずっと泣きすぎて、枯れてしまうんじゃないかってくらい長い間ずっとゾムのシャツを濡らした。それでも彼は離れること無く、かと言って何を言う訳でもなく、頃合いを見て泣き疲れてボーッとしてきた私の顔を覗き込んできた。

『…ぐすっ』
「お茶、飲む？」

テーブルに用意しておいたお茶の入ったマグカップを渡されるが自分で飲む気が起きなくて口を開ける。そうすればゆっくり傾けて私の口へと流れてきた。

こく、こく、とゆっくり嚥下するが収まりきらなかった滴は重力に従って顎からポタリと垂れていった。

「あーあー溢れとるで」

マグカップを離しながら口元に垂れる滴をぺろりと舐めとられる。大人しくことが済むのを待てば、ゾムは落ち着いたと思ったのか目を細めて微笑んだ。

「落ち着いた？」
『……ん』
「大丈夫やから。わかっとるから」

マグカップをテーブルに置いてそのままずるずるとずり落ちて寝転がる。ゾムを下に私も寝転がる形になり、何してるんだと彼のペリドットの瞳を見上げた。

「放っておいて欲しいけど、側にいて欲しいんよな？」

俺もそういう時あるからわかんねん。とゾムは歯を見せて笑い、腰に回してた腕を外して大きな欠伸をした。

「傍におるで。離れたりせぇへんから、安心してな」

ゾムの胸の辺りに顔を埋め、ぎゅっとシャツを掴む。
温かくて、ほんのり石鹸の匂いがした。

猫のように擦り寄ったまま動かずにいれば次第に彼からすぅすぅと寝息が聞こえてくる。眠いのに我慢して居てくれたんだ…

ごめんね、と小さく呟いて薄く開いてる唇にそっと口付ける。気恥しさにそのまま胸に耳を当てるように寝転がれば、彼の心音がとくとくと聞こえてきて、その心地良さから次第に眠気がやってきた。

『…ねよ』

我ながら面倒なのは重々承知している。こういう時自分が女であることを酷く後悔する位には。

だけど彼がそばに居てくれるから私は何度も歩き出せる。彼に甘え過ぎなのもわかっている。

この感情のループは、いつになったら止まるんだろう。

それは私にも、誰にも、分からない。

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何故か完結になってましたね…終わってませんので連載中に戻しておきます。

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