黒瀬の短編置き場【d!】 (ページ16)

今日:8 hit、昨日:8 hit、合計:24,242 hit

↓ ページ16

泣き止むまでオスマンは私を抱き上げてソファーに座り、優しく頭を撫でる。ひとらんはバツが悪そうに晩御飯作りを再開させる。

「そろそろ泣き止み？疲れるやろ？」
『んぅ…』

膝の上に座って凭れ掛かる私の目元を優しく拭いながらオスマンはちゅ、と唇を寄せる。ふるふると払うように首を振れば「小動物みたいやな」なんて笑った。

「A、ひとらんが意地悪やなくてAを思っての発言ってのはわかるな？」
『…うん』
「美味しいご飯を作ってくれてんねん。どっちが悪いかはわかるよな？」
『…うん』

よし、と頷いたオスマンは両手で頬を包んで額をコツンと合わせてから手を離す。それを合図にゆっくりリビングへと向かい、シンクに立つひとらんの背中にしがみついた。

『ひとらん』
「…なぁに」
『…ごめん、なさい』
「…うん。いいよ」

蛇口を捻って水を止め、体を回し真正面から抱きしめられる。おずおずと背中に腕を回せば、先程のオスマンと反対側の目元にキスを落とされた。

「目元、赤くなってる」
『…むぅ』
「擦ったらダメだよ。悪化するから」

水に触れていて冷たくなった指で目元に触れる。冷たい指が心地よくて目を細めれば、ひとらんもまた「小動物みたいだね」と微笑んだ。揃いも揃って失礼だな。

「俺もごめんね。でも、Aが心配なのは覚えておいてね」
『うん』

安心したように微笑んだ彼は「ご飯にしよう」とお皿を用意し始める。それに手伝おうと料理をよそったお皿を運び、オスマンを呼んで席に着く。

「「『いただきます』」」

仲直りして食べたカレーはとっても美味しかった。

※※

「Aーせめてお風呂入ろ？」
『ん、や…』
「なら一緒に入る？」
「は？オスマン何言ってんのたたっ斬るよ」
「冗談やん…」

晩御飯を食べ終えて重たくなってきた瞼を何とか開けようとするも、どんどん重たくなってくる。私を真ん中に、ソファーに座るオスマンとひとらんに挟まれながら船を漕げば両方から腕が伸びてきた。

「眠そうだし明日も朝からだからもう寝かせてあげよう？」

頬に手を伸ばすひとらんと

「女の子なんやからお風呂は入らなきゃダメやで」

腕を優しく掴むオスマン。

だけど早く眠りにつきたかった私は、ひとらんの方に向いて抱き着いた。

『ねる…もう、げんかい』
「ん。じゃあ寝よっか」

頭をぽんぽんされながら、頬を膨らませるオスマンを連れて3人仲良く洗面所へと向かい歯磨きを済ませた。

.