44.知らなかった世界 ページ46
em side
研究所に最初にいた私は研究対象として生活するのを、本を読ませてもらう事を条件に生きていた。それ以外の事に興味を持てなかったからだ。
だけれど一つだけ興味の持てる存在がいた。
それは、人間だ。人間は弱く、自分の欲に忠実で、その癖群れなければ個としては弱い生物。それ程の認識でしか持っていなかった。
昔の私は、だが。
※※
「エーミール。外に出てみないか？」
「…お断りします」
話しかけてきたのはAさんの伯父に当たる方。研究員だった彼は本の虫と化してる私に毎日の様に外に出ないかと声掛けてきました。当時の私はそれを鬱陶しく思い、首を縦に振ることもありませんでした。そしてそれはグルッペンさん達と出会った後も、変わることはありませんでした。
そんなある日のこと。研究所から彼は私達を解放し、とある大きい家へと迎え入れてくださいました。
「研究はどうしたんですか」
「これからは気にせず生きていいんだぞ」
そう言われても、他の生き方なんて知らなかった。
※※
「えーみーるー！」
「(やれやれ、また来たのか)」
猫の姿で日向ぼっこをしていた時、まだ小学生のAさんが遊びにやってきた日がありました。彼女はいつも笑顔を絶やさない子でした。猫の私を膝に抱え、本を読んだり一緒に遊ぶこともありました。
『…そして、女の子は、お父さんとお母さんと、しあわせにくらしましたっ！おしまい！』
「にゃあ」
『…いいなぁ。しあわせで』
けれど時折見せる寂しそうな顔に、なんだか胸が苦しくて。何かできないかと思ったこともありましたが、当時はまだ本当の姿を隠さなくてはいけなくて。
「…にゃあ」
『ふふっ…ありがとう、えーみーる』
「にゃー」
『でもだいじょうぶ！さみしくないよ！』
大きい瞳からこぼれ落ちる涙を舐める。
彼女は弱い人間のはずだ。だが彼女は強がり大丈夫！と強気に笑った。そんな彼女を見て寄り添ってあげたいと思ったんです。
『ありがとうね、えーみーる』
「…にゃー」
※※
「…Aさん、朝ですよ」
そろそろ朝食の時間だ、と先に目を覚ました私は小さい彼女の体を優しく揺らす。うっすら目を開けた彼女はまだシャオロンさんに抱き枕代わりにされていて、『動けないや』と苦笑していた。
「待っててくださいね」
私だけではどうしようも出来ないのでリビングへと向かう。そこで遭遇したゾムさんは「なんかええことあったんか？？」と、何故か嬉しそうに笑った。
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遥(プロフ) - 当時はコメントをしておりませんでしたので今更となりますがコメント失礼致します。本作はとても素晴らしい作品で、多忙な毎日の楽しみにさせて頂いていました。本日は誠に勝手ながらそのお礼を伝えたいと思い馳せ参じた所存です。素晴らしい作品を有難う御座いました。 (2021年11月20日 21時) (
レス) id: 9095c0dec3 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。一年ほど前に初めてこの作品を拝見して以来、ずっとこの作品の虜となっておりました。以前このサイトの垢を消してしまったせいでこの作品をもう一度見つける事が出来なかったのですが、今日になって漸く探し出すことができました。 (2021年11月20日 21時) (レス) id: 9095c0dec3 (このIDを非表示/違反報告)
114514 - 心臓が死にかけに……………ぐはっ (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - ふぁこ。さん» ありがとうございます！ヽ(；▽；)ノ最近更新ペースが少し落ちてますが、頑張ります！ (2020年2月26日 13時) (レス) id: 46340c89d0 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁこ。(プロフ) - 設定と黒瀬さんの文章が好きで、いつもキュンキュンさせてもらってるんですが、突然の戦闘(？)シーンが好きすぎてドキドキしました笑。応援してます！頑張ってください (2020年2月25日 19時) (レス) id: f472df8b77 (このIDを非表示/違反報告)
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