38.ご褒美ください ページ40
「Aさん」
『ん？どうしたのしょっぴ』
閉店業務を終えてリビングへの扉を閉じる。するとしょっぴが背後から私に声をかけた。にゃあ、と鳴く彼を手元に抱き上げる。
「ご褒美ください」
『ご褒美？』
「撮影会耐えたご褒美です」
舌をペロリ、と出して首を傾げる姿に胸を撃ち抜かれる。くっ…あざとい…
『…何がいいの？』
「甘えさせて欲しいです」
『へっ？』
いつもクールな彼からのまさかの要求に間抜けな声を上げる。あれ、君ってそういう子だっけ？
『いいけど…ブラッシング？それとも遊ぶ？』
「いや、そうじゃなくて」
手元にいた猫がするりと足元に降りた瞬間青年の姿へと変えて背中に腕を回し、もう片方の手で私の手を取る。紫の綺麗な瞳が至近距離で私を見つめた。
「「俺」を構ってください」
___人型は予想外だなぁ…
※※
鼻歌を歌う彼の髪を優しく撫でる。さすが猫、サラサラである。
「はぇー…」
幸せそうに溶けてるショッピの要望は「膝枕して欲しい」という事だった。猫は液体、とはよく言ったものだ。ぐでーっと私の膝とソファーに溶けている。
現在彼は普段の様子を全く見せずゴロゴロと喉を鳴らしながら上機嫌で横になっている。私？めちゃくちゃ恥ずかしいけど彼の髪をいじる事が出来るので良しとしている。
「おいショッピ！お前何してんねん！」
「膝枕やけど？」
「見りゃわかんねん！ズルいぞ！」
「見てわかるなら聞かんでくれるか？あと、これは俺が働いた言わば報酬やからな」
気付いたチーノが大股でこちらにドスドスとうるさくやって来てソファーの後ろに立って私を後ろからバックハグする。こら、頭を押し付けてくるんじゃありません痛いから。
「俺も撫でて下さい！」
「は？何言ってんねん仕事した特権やぞ」
「俺かて今日も働いたわ！」
ぐぬぬ…と私を間に睨み合う2人にため息をついてショッピは頭を、チーノは頬を優しく撫でた。
『2人共撫でてあげるから静かにして。うるさい』
「わーい」
「…仕方ないですね」
満面の笑みで喜ぶチーノと妥協してくれたショッピを撫でながら、夜の時間はゆっくりと過ぎていった。
「はぁ…Aってテクニシャンやなぁ」
『チーノやめてなんか別の意味に聞こえる』
「別の意味ってどんな意味なんですかねぇ？」
『ショッピ？』
「嘘ですすみません撫でるの止めないでください」
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