29.渇望との葛藤 ページ31
トントンの処置を受けたAは消毒液の染みる痛さに耐えながらソファーの向かいに座るグルッペンの方へと向いた。トントンは救急箱を置いて隣に腰掛ける。
『…それで？話って？』
「ロボロについてだ」
腕を組んでため息をつく彼の口からロボロについての話が語られる。
「ロボロは力のコントロールが苦手でな…人の姿に長時間なれないんだ」
『…それだけ、じゃないよね』
首に巻かれた包帯に触れながら問えば、グルッペンは静かに頷いた。
「以前言ったかもしれないが、俺らは人の生気や血を得て生きている。少しでも吸えば長期間は大丈夫なんだが…」
そこまで言ってグルッペンは言葉を詰まらせる。
代わりに隣で黙って聞いていたトントンが口を開いた。
「ロボロは元々大食いでなぁ…まあゾムもなんやけどな？今回配分ミスったみたいで、耐えれんかったみたいなんや」
グルッペンが言うにはよく寝ていたのは体力温存の為だそうだ。
『…そんな事、あるの？』
「実際襲われただろう。その件に関してはこちらの配慮ミスだ…」
本当にすまない、と頭を下げるグルッペン。隣にいるトントンも眉を下げて辛そうな顔をしていた。
びっくりしたけど、痛かったけど、彼らはわざとじゃない。だから怒ってもいないのだが、そう言っても守ると言った私に傷を負わせた罪悪感はそう簡単にぬぐえないだろう。
どうしようか、と顎に手を当ててロボロの事を考える。そういえば自分の血を吸ってあの後どうなったのだろうか？
『ねぇ、ロボロは？』
「まだ血が足りないみたいで暴れてるな。今はひとらんが抑えている」
あとはこちらで何とかしよう、と言うグルッペンに私は席を立った。
『…うん、わかった。あとは任せて』
「は？」
「ちょい待てA、お前まさか」
手を掴んで止めようとするトントンの手に触れてそっと離す。
『ロボロの所に行ってくる』
そう口にすればグルッペンは立ち上がり、私の前へと歩いてきて肩をつかんだ。
「やめろ。やめてくれ」
『嫌』
「これ以上傷を負わせたくないんだ」
「頼む」と、悲痛に歪んだ紅蓮の瞳が私を見つめる。
でもね？私も引くつもりも、逃げるつもりもないんだよ。
『…苦しんでるのはロボロや皆じゃないの？』
傷つけてしまった後悔を、渇望による苦しみを抱かなくていいから。
『大切な仲間なんでしょ？』
視線を下げた彼の手に触れて優しく微笑む。
『私は大丈夫』
___大事な家族なんだよ。私にも、守らせて？
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遥(プロフ) - 当時はコメントをしておりませんでしたので今更となりますがコメント失礼致します。本作はとても素晴らしい作品で、多忙な毎日の楽しみにさせて頂いていました。本日は誠に勝手ながらそのお礼を伝えたいと思い馳せ参じた所存です。素晴らしい作品を有難う御座いました。 (2021年11月20日 21時) (
レス) id: 9095c0dec3 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 初めまして、コメント失礼致します。一年ほど前に初めてこの作品を拝見して以来、ずっとこの作品の虜となっておりました。以前このサイトの垢を消してしまったせいでこの作品をもう一度見つける事が出来なかったのですが、今日になって漸く探し出すことができました。 (2021年11月20日 21時) (レス) id: 9095c0dec3 (このIDを非表示/違反報告)
114514 - 心臓が死にかけに……………ぐはっ (2020年7月1日 21時) (レス) id: 3a17ec7a5b (このIDを非表示/違反報告)
黒瀬(プロフ) - ふぁこ。さん» ありがとうございます！ヽ(；▽；)ノ最近更新ペースが少し落ちてますが、頑張ります！ (2020年2月26日 13時) (レス) id: 46340c89d0 (このIDを非表示/違反報告)
ふぁこ。(プロフ) - 設定と黒瀬さんの文章が好きで、いつもキュンキュンさせてもらってるんですが、突然の戦闘(？)シーンが好きすぎてドキドキしました笑。応援してます！頑張ってください (2020年2月25日 19時) (レス) id: f472df8b77 (このIDを非表示/違反報告)
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