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「ねえ、恋人と言っても……何するの?」
「それなら大丈夫だ。参考になるものを持ってきた。」
三郎は王子とかなんちゃら言われてて、告白もされまくってるのに付き合わない。この雷蔵一筋野郎め。誰とも付き合わないので、まだチャンスがあると思ってる私は無謀な試みをしているのか?でもチャンスはチャンスだ。
「参考になるものって何?」
「これだ!」
そう言って三郎が得意げに取り出したのは
「私のマンガじゃん!!!!!」
雷蔵に貸していた私のマンガ。
まさか三郎の手に渡ってたとは…。
「……雷蔵のじゃないのか!!」
「私のだから!雷蔵に貸してたんだよ!」
まじまじと本の表紙を見つめる三郎。
「いや…Aの部屋に似たようなマンガはあったなとは思ったが…。」
「この前雷蔵に貸したんだよ…。」
バッと顔を上げる三郎
「それなら話が早いじゃないか。」
「何が?」
「このマンガなら何回も読んでるだろう?スムーズに恋愛ができる!」
…………恋愛の意味が違うぞ。
でも今の三郎に何を言っても無駄だ。変に頑固なところがあるのだ。
「それにAは感情移入することが得意だろう?」
確かに映画を見たら感動的なシーンでは必ず泣いてしまう。フラン○ースの犬なんか私の涙のツボにどハマりだ。
というか、そんなわざわざ感情移入しなくても好きなんですけど。って言えたら苦労しない。
そもそも感情移入とか言ってる時点で私の事なんか幼なじみとしか思ってないのがよく分かる。
「…………で、何をするの?」
「えーとな、まず……ハグだ。」
そう言って絨毯の上で向かい合わせになっている私の腕を引く。
突然のことになんの対応も出来ない、文字通り言葉の出ない私の背中に腕を回そうとした。
「ちょ、ちょっと!!!」
気づいたら三郎の服が目の前にあったのでパニックになり突き放す。
「三郎は急すぎるよ!心の準備が出来てない!!!」
「ふーん。緊張、してるのか。」
ニヤニヤしながら腕組みをする三郎。
見破られたことと三郎がなんとも思ってないことに頬がこれまでにないくらい熱くなる。
「い、1週間でそんなカップルなんて無理だから!」
「………じゃあ1ヶ月に延ばしてやる。1ヶ月、彼女らしく振る舞うんだぞ。」
後、このことはあんまり言いふらさない事。と、言いながら三郎が立つ。
ニヤリと笑い
「顔、茹でダコみたい。」
そういい残して窓から出ていった。
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