不良=恐怖とは限らない。【男主】

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現在時刻、午後11時。
そろそろ、日を跨ぐ頃合い。

埠頭で愛車に寄りかかり相手を待つ。
胸元には殺す為にある拳銃がある。


『…なんで、俺が。』

「あ、アンタがモヒートかｯ？」


遅くにやってきたのは中年の男。
右手には札束が入っているであろうアタッシュケースを持っていた。


『…そうだ。』

「よ、用意はした…！これで俺達を解放してくれるのか…!!?」


アタッシュケースを開けると確かに札束がビッシリ詰まっていた。中を確認したが、どうやら中身も札束が詰まっていた。


『…嗚呼。』


男は安心して、この場を去る為に俺に背を向けた。

俺は、拳銃をそっと取り出し、男の後頭部を目掛けて一発撃った。



ﾊﾟｧﾝ!



「ｩｶﾞｯ…!!」



スローモーションのように倒れていく男の体。



殺した瞬間、感情が"無"になった気がした。


俺の中から何かが抜けてしまった。
これはまるで…魂が抜けるようだった。


俺は男の体を海へ躊躇なく突き落とした。
遺体はどんどんと見えなくなり、波紋も収まった。



✱✱✱


視点:バーボン


アジトに少し用事があったため来ていた。
あまり居心地が良いとは言えないアジトにはあまり長居はしたくない。


「あら、バーボンじゃないの。」

「ベルモットですか。珍しいですね、この時間にアジトにいるのは。」

「そうかしら？…そう言えば、モヒート任務で人を片づけたそうよ。」

「!!?」


ベルモットからそう伝えられた。
人を片づけた、と言うことはつまりそういう事だ。

モヒートは今まで取り引きや、簡単なハッキングしかやっていなかった。
人を殺すなんていう任務は初めてだった筈だ。


「モヒートは今どこに？」

「あら、そんなに彼が心配？彼なら、もう自室に戻ってる筈よ。」


俺は直ぐ様モヒートの部屋へ向かった。
彼の部屋は昔から角部屋である。なので、少し遠い。

彼の部屋の扉をノックする。
しかし、いくら待っても返事はなかった。
ベルモットからは既に部屋にいると聞いていたが…。
ドアノブを捻ると鍵がかかっておらず、簡単に扉は開いた。


「モヒート…？入りますよ。」


一言かけて扉を開けた。
中は昼なのにも関わらず部屋の中は真っ暗だった。


『…なんだ。』

「ｯ」


暗闇の中からモヒートの覇気のない声が響く。
ベッドの上に人影が見えた。


「モヒート、大丈夫です？」


モヒートに近づき、顔を覗こうとしたその瞬間、
急に腕を引っ張られた。


-32-へ続く

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