幸せな家族のはなし３ (ページ35)

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［８－３］ページ35

和也side

「あー。
来年の夏は、叔父さんに試合見に来てほしいな～」

「来てくれるよ。潤頑張ってるもん」

「だといいんだけど。笑」

「大丈夫。無理でも俺が連れてくる」

「えぇ、和が？笑」

「うん。潤の試合見に来てくれなきゃ
泣いちゃうぞって腕をねじってやるの」

「ふはっ。和それ、録画してるやつ見たな？笑

……けど、叔父さんも来るなら
勝つとこを見せたいな」

「きっと勝つよ。潤なら」

「ん。ありがとう和。」

潤が俺と目を合わせて微笑んだ後、
「来年、絶対に勝つわ」と真剣な顔で誓う。

んふふ。それ。

それそれ。俺、その潤が好き。

そのどこまでも真っ直ぐで
貫いてくる強い潤の目が大好きだ。

その目を見てると、
あー、潤ならきっとやってくれるなって
確信もなく信じられるから。

……2週間前の、7月上旬に行われた
今年の甲子園への切符をかけた予選。

潤の高校は惜しくも決勝戦で負けてしまい
全国への切符を手に取ることが出来なかった。

ベンチにいた潤も結局打席へ立つことはなく、
高校1年の夏は悔しさと共に幕を閉じたのだった。

それから今日まで。

潤はハードな練習に加えて、
自主練にもさらに力を入れ始めた。

さっきみたいに妥協はなく
抜かることもなく。

兄達としてはやり過ぎないかちょっと心配だけど、
潤の消化しきれなかった思いは分かるから。

それに、悔しさをバネにして突き進む潤は
恐ろしく進化して伸びることを知ってる。

元に持つストイックさと、追いつけない熱さ。

その思いが形となって
潤を強くさせるんだと思ってる。

「新チームでも、頑張ってね。潤」

「ん。ありがとう」

ふわっと笑った潤の目は
優しく、しっかりと自分の意志を持っている。

うん。やっぱ、潤の目はいいな。

色々な表情を見せてくれる。

たまにその熱すぎる熱量にドキッとしちゃうけど。

試合で見るととてつもなく強い味方だ。

昔から変わらない眼差し。

人の表情を比較的読んでしまう俺には
うざったい目があるけど。

潤の目は強くて濃くて、綺麗だ。

「うし。明日もあるし、そろそろ寝るぞ」

「うん。おやすみ、潤」

「おやすみ。和」

電気が消える。

俺と潤はお互いに向かい合って
昔と同じ体制で、目を閉じた。

また明日。

幸せな時間が少しでも長く、
幸せな思い出が1つでも多くなるように。

俺はらしくない思いを頭に浮かべ、
沈む意識に身を任せて深い眠りへとついた。