［５−３］ ページ43
智side
「和〜、今日ね、おやつにドーナツ買ってある」
「いーね。これクリア出来たら食べよ」
「これをクリア……？ え、俺出来るの？
って、あっ、あれ、これどうすんだ？」
「んふっ、頑張れ智にぃ〜」
先にルートを走ってくれる和のあとを
ついて行くけれど、明らかに飛べない幅の穴。
これマジでどうすりゃいいか分かんない。
え？
和どうやってここ飛べた？
「和、ちょ、これ、行くしかない？
行くしかないやつ、なのっ……あ、あー！」
「くふふふっ♪ あー智にぃ落ちたぁー」
俺の叫びと
楽しい和の声がリビングに広がる。
ちっくしょー。あとちょっとだったのに。
「和、ちょっとさっきのとこ
ゆっくり飛んで」
「いやいや、ゆっくりじゃ飛べませんから。笑」
「ちょっとでいいから。コツが知りたいっ」
そう言ってリモコンを持ち直すと
和は満足げに「仕方ないなぁ」って再度スタート。
それから4回目のプレイの末。
「あっ、いけるよ智にぃ！」
「うわっ、いけるっ？」
「いけるいける！ つっこめ！」
「んぬー！ おっ、お……っしゃい！！！」
「あははっ、いったいった！笑」
ほとんど和がリードしてくれたけれど
ようやく俺のキャラクターがゴールをくぐった。
「やったぁ〜！」
「んふっ、出来たねぇー？」
「いやぁ、和のおかげだわ」
ゲームだというのにお互いイキイキしながら
達成感にハイタッチを鳴らす。
そしてその後には約束していたおやつタイムへ。
一旦ルート選択の画面で止めておいて
お皿へドーナツを置いてコーヒーを入れ直す。
今日のおやつのドーナツは雅紀と発見した
大型スーパーの中にあるカフェのドーナツ。
そこにあったポスターのカリッサクッが売り文句の
オールドファッションは、出来たてじゃなくても
香ばしい匂いがふわっとくすぐる。
あまり食べない和も甘ったるくない
オールドファッションには興味を示したらしい。
「いい匂い」って隣でにこにこして
オールドファッションを手に取っている。
それじゃあ「いただきます」と
しばしの休憩タイム。
上機嫌な和を隣に何気ない話を交えながら、
可愛い弟の楽しそうな姿に微笑ましく口角を上げた。
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作者名：あやりゅ。 | 作成日時：2019年6月19日 0時
