幸せな家族のはなし２ (ページ28)

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［３－６］ページ28

翔side

「雅紀……」

智にぃが泣きそうに俯く雅紀の背中を撫でる。

俺も行き場のない手を同じように持っていって
黙ったまま、優しくポンポンと叩いてやって。

「智にぃっ……俺、なんて言えばよかったと思う？」

事故だとしても、その光景は恐らくその子にとって
とんでもなく重たい、酷い後悔を残したんだろう。

親切に話を聞いてくれた雅紀に、迷惑をかけた。

真面目な子だからこそその重みは十分理解していて
だからこそ優しい雅紀の言葉じゃ届かない。

例えそれが雅紀の本心だとしても
悩み込んでいたその子にとっては追い打ちだ。

雅紀もそれが分かってて。

ちゃんと分かってるから、今、どうしようって
浮かばない正解を探しているんだ。

「雅紀も、その子も……優しすぎるんだね」

ポツリ、智にぃが放った言葉は
全ての思いを理解した上で肯定する。

本当にその通りだと、俺も思う。

同じ状況なら確かに誰もが悩むことだろう。

でも、優しい2人はその誰も以上に
真剣に悩んで、苦しんでしまう。

深く真剣に受け止めてしまって
仕方ないで済ますことが出来ない。

「ね、雅紀」

未だ俯く雅紀を見つめたまま、
智にぃは、続ける。

「その子にさ。さっきの、話してみたら？」

「さっき……？」

「うん。雅紀が、
普段からその子のことをどう思ってるか」

ふにゃりと笑った智にぃは
雅紀の左腕を撫でたあと、「大丈夫」と言う。

「正直、その子の家のことは俺達じゃ
どうにもなんないと思うんだ。

けど、その子の後押しは出来ると思わない？」

「後押し……」

雅紀の潤んだ目が智にぃを捉え、
チラリと俺へ移される。

俺は安心させられるように
智にぃの案を頷いて肯定を示す。

「うん。俺もそれがいいと思う。
その子が、覚悟を持って意志を通すなら
雅紀は全力で助けてあげればいい」

そう言って雅紀の頭を撫でてやれば、さっきより
上がった口調で「できるかな」って不安げに笑う。

けどその答えは俺も智にぃも決まっていて。

雅紀なら出来るよ。

口を揃えて言う思いは、ピッタリと重なった。