幸せな家族のはなし２ (ページ39)

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［４－９］ページ39

潤side

「……ん」

「おっ、和起きた？」

モゾモゾと動き始めた和に気付いた翔にぃが
回す腕を解くと、ゆっくりと目が開く。

それで最初は少しうるさいって顔で和の目線が
動いてたけど、俺を見つけた瞬間そのままフリーズ。

それからガバッと起き上がって瞬きを繰り返した。

「潤？」

「ただいま和」

「あ、おかえり。いや、それより頭は……？」

意識が冴えだした和の眉がどんどん下がっていく。

あの光景を思い出したのか心做しか
潤み始めた和の目がゆらゆらと俺の頭に移る。

だから俺は安心させるように笑って和の手を握った。

「色々病院で検査してもらったけど、
こぶが出来たくらいだってさ」

不安げな和に「ほら」と髪を上げて
腫れた患部を見せてやる。

それに和は痛そうに顔を渋めたけど、
ちゃんと説明を聞けば納得してくれたのか
ふっと表情が柔らかくなった。

それから「大きなことにならなくて良かった」って。

まさかの智にぃと全く同じ言葉を発するもんだから
意味が分かる俺と智にぃが吹き出してしまえば
ハテナを浮かべた3人が首を傾げる。

だから「同じこと言ってた」って意味を伝えれば
今度は3人も微笑んだ。

「あっ、そうだ！実はねみんな！
今日の晩ごはんは俺が作っちゃいましたー！」

思い出したように挙手した雅紀にぃが
ドヤ顔のまま楽しそうに口角を上げる。

「あぁ、だから雅紀、迎えてくれたとき
リビングから来たんだ」

嬉しそうな智にぃは顔を綻ばせながら
雅紀にぃに「ありがとう」って頭をポンポン。

受けた雅紀にぃも嬉しそうに
「和は翔にぃに任せて俺はすることなかったからね」
って謙虚な反応だ。

ふふ。こういうの、やっぱりなんかいいな。

家族の役割がちゃんと回ってる感じがして
みんなの優しさが凄い分かる。

まあ単にこんな時間が好きなのもあるけど。

でも案外こういうのが痛みを忘れる
薬みたいなものなのかなって思うし。

「ね、雅紀にぃ何作ってくれたの？」

「今日はね！愛を込めたしょうが焼きです！」

「愛を込めたって……
雅紀にぃ余計なもん入れてないでしょうね？」

「それはお楽しみ♪」

「しょうが焼きか……ちょー美味そうだな」

「あ、翔はやっと起きた？」

「ん。しょうが焼き行こう」

いつの間にかまたウトウしていた翔にぃが
雅紀にぃの声に反応して体を起こす。

そしてそれが合図みたいに立ち上がって
みんなでリビングへ向かうことになった。