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ガガガガい ネコ編4畳の香りがする部屋の中で ページ21

それから一週間経って、そう言えばあれから彼女と話をしていないことを思い出した。

どうやら、高峯や山下、また周りの生徒がいるところでは、僕と会話をしたくないようだ。
それは僕も同じだ。
もし会話しているところを見られたら、変に囃し立てられ、噂を流され、散々なことになるだろう。


今日の保健委員会は長引き、たまたま通りかかった先生に、最後の鍵締めを任された。

締め切られた格技室。
しかし、鍵は閉まっていないので、念のため中に誰もいないか確認しようと、扉を開けた。

中には誰もいない…
と思っていたが、格技室のちょうど真ん中には綺麗に広がった長髪と寝そべった背中があった。


「周さん…」


僕の声に気づき、背中を向けていた彼女はゆっくりこちらを向いて、


「ミホ、だよ…」


と、寝起きの声で言った。


「何してるの?」


僕の強張った声が室内に響き渡る前に、


「見つかっちゃったの。先生に見つかりたかったのに、ながしまくん来た。」


と彼女は答えた。




「ねえ、こっち来て。」


僕はミホの言葉通り、彼女の隣であぐらをかいた。


「ねえ、ミホ。」


そういえば初めて、ちゃんと「ミホ」と呼んだ気がする。それに驚きつつも彼女は、


「何?ながしまくん。」


といつもの調子で聞き返してきた。


「ミホは、日本語上手いね。話すのも。」


僕の言葉を聞いてから、ミホは仰向けになって、天井に向かって笑った。


「ほんと?そんなの言われたの、初めて。」


ミホは続ける。

「中学生の頃ニホンに戻ってきた。小さい頃ニホンにいたらしいけど、覚えてない。大阪にも行った。あと、鹿児島も。」


「だから少し訛ってるんだね」



「うん、だって転勤族だから…」


彼女の片言な言葉の中で、「転勤族」という言葉だけが妙にスムーズなことに気がついて、僕は何もいえなくなった。

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川川わらび - 暁さん、コメントありがとうございます!そう言っていただけたのは初めてなので、大変嬉しい思いです。更新ペースはあまり良くないかもしれませんが、気が向いた時にいつでも読んで頂ければと思います! (2020年11月3日 13時) (レス) id: c7e5b74a91 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 是非いつか合作など、一緒にして頂きたいものです。貴方の様な作者様の作品が、有名になられることを願います。頑張って下さい! (2020年11月3日 9時) (レス) id: 8896c28c37 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 私も最近占ツクで書き始めた者なのですけれど、ここまで小説に寄せられている作品を見るのは久しぶりです。これからの活躍を期待して、お気に入り登録と、高評価の方、押させて頂きました。 (2020年11月3日 9時) (レス) id: 8896c28c37 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:川川わらび | 作成日時:2020年10月31日 0時

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