ガガガガい ネコ編３嘘 ページ19
5時間目、体育の授業が終わってから自分の席に戻ると、机の端に正方形の付箋が貼られていた。
そこには先生の字で、「保健室に来て、周さんからの伝言。」と書かれている。
走り書きで読みにくいが、何度読んでもそう書かれている。
僕には何の心当たりも無いが、無いなりに色々と思い出してみた。
しかし、周さんと話した記憶などほとんどなく、やはりまた、例の連中に変な噂を流されたとしか思えなかった。
とりあえず、保健室に向かう。
僕のクラスの教室からは保健室は遠く、この距離を担架で運ぶのはさぞ大変だっただろうと、どうでもいいことを考えてしまった。
保健室に着くと、ベッドの手前にはカーテンが締め切られていて、それが風でチラチラと揺れている。
保健の先生はいないようだ。
「ながしまくん」
初めて聞いた声。多分、周さんの声だ。
「え、はい。」
周さんとの会話は初めてで、なんだかかしこまった返事をしてしまった。
カーテンがゆっくりと動く。
周さんは姿を現した。
やっぱり、真っ黒な長い髪が真っ先に目に入る。
「こっち、きて。」
若干片言な彼女の言葉通り、僕はぎこちなく歩み寄った。
「座って。」
周さんが、座っているベッドの上を合図したので、僕は周さんから少し離れて座った。
「今日はかえらないの。いつもは先生、両親を呼ぶけど、今日はワタシ、わざと起きたの。」
そういえば、周さんは今までも何度か倒れていた。
どうやらその度に親を呼ばれて帰宅していたらしいが、今彼女が言った「わざと」というのが引っかかる。
「ワタシね、うそ、ついてるの。いつもいつも、倒れるふり、してるの。」
そう言った後、周さんは僕を見つめた。
分からない。
何故か、心臓の音がよく聞こえるように感じる。
僕がしばらく黙っていると、周さんは制服のポケットの中から小さな柱状のものを取り出して、きらきら光るキャップを外した。
それは真っ赤な口紅で、その赤い部分を、周さんはゆっくり自身の唇に近づけていく。
「えっ、ちょっと…」
さっきまで中々出なかった声が、反射的に出てしまう。
そのうちに、周さんは口紅を綺麗に塗り終わっていた。
そして僕の方に向き直り、
「なに？」
と首を傾げる。
少し、笑っている。
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川川わらび - 暁さん、コメントありがとうございます！そう言っていただけたのは初めてなので、大変嬉しい思いです。更新ペースはあまり良くないかもしれませんが、気が向いた時にいつでも読んで頂ければと思います！ (2020年11月3日 13時) (
レス) id: c7e5b74a91 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 是非いつか合作など、一緒にして頂きたいものです。貴方の様な作者様の作品が、有名になられることを願います。頑張って下さい！ (2020年11月3日 9時) (レス) id: 8896c28c37 (このIDを非表示/違反報告)
暁(プロフ) - 私も最近占ツクで書き始めた者なのですけれど、ここまで小説に寄せられている作品を見るのは久しぶりです。これからの活躍を期待して、お気に入り登録と、高評価の方、押させて頂きました。 (2020年11月3日 9時) (レス) id: 8896c28c37 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：川川わらび | 作成日時：2020年10月31日 0時
