・ ページ35
・
湧くんは私には勿体ないくらいの素敵な人だった。
見た目からか皆にちょっと怖がられて変な偏見を毎回持たれる私。
でもそんな私に湧くんだけは
「ねぇみりちゃんだよね？今日もバイトがんばろうな！」
「みりちゃんこれあげるわ」
ってアイスをくれたり、こんな私にも優しくしてくれた。
最初は正直グイグイきて苦手な存在だったから自分でも酷い対応をしたと思う。
話しかけてくれてるのにも限らず無視をしたりもした。
でも、いつも笑顔で時には辛い時に助けてくれたりしていつからか苦手な存在が特別な人に変わっていた。
だから「湧くん好きになっちゃった」っていつもバイト終わり送ってくれる帰り際に手を引いた。
今思えば、ずるかったなって思う。
湧くんのインスタに映る女の子の存在に気づいていたのに。
私は知らないフリをした。
少し戸惑った顔をした湧くんだったけど、
直ぐにちゃんと真っ直ぐと「俺もみりが好き」と伝えてくれた。
そこから湧くんと過ごした日常は楽しかった。
色んなとこにも連れていってくれたし、それなりにキスもあれもこれもした。
でも呑み会の日に湧くんは私じゃなくて酔ったAさんの元に駆け寄った。
あー、やっぱり私は湧くんの特別にはなれない。
結局ただの彼女なんだ。
特別と彼女は違うんだよ？
また違う日もソファーの下に座って私がソファーに座っていた時に湧くんがインスタのストーリーを止めていたのが気になって、
ちらっと見えた画面には深田さんとAさんの付き合ったとのストーリー。
少し暗そうな顔をした湧くんにあぁもう期限切れだと感じた。
「湧くん別れたい｣
また同じバイト帰り。今回は手じゃなくて服の裾を引いた。
「え？」
少し傷ついた顔をした湧くんだけど「そっか、ごめんな」とすぐに言ったあとに「家までだけ送らせて」と私の前を歩いた。
「なんのごめんなの？」とは聞けなかった。
ほんのちょっとだけ嫌だって別れたくないって言ってくれるんじゃないかと期待した私は大馬鹿者だ。
だって最初から湧くんは
きっと私のことを好きじゃなかったから。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 883人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にゃん | 作成日時：2023年3月23日 18時
