参 ページ37
夕刻、現れたのはいつもどおり麗しき宦官である。天女の笑みの背後には、高順が付いている。最近、眉間にしわが増えているように思えるが、なにか気苦労でも増えたのだろうか。
「薬屋。今日の茶会はどうだった？」
「楽しいひとときでしたよ、では」
後宮を統べる立場にいるのか、この宦官は他の四夫人のもとを定期的に回っているらしい。
今日の急な茶会の組み合わせは、なんだか変だと思ったら、こやつが絡んでいたようだ。
面倒なことにならぬ前に、Aは退室しようとするが、いうまでもなく止められる。
「はなしていただけませんか？」
「話は終わってないんだが」
呆れた眼差しをこちらに向けたところで、Aとしては床に視線を落とすことしかできない。今の自分は死んだ魚のような目をしているに違いない。
「うふふ、ずいぶん仲良しさんね」
「玉葉さま、眼精疲労には目の周りを指圧するといいですよ」
あまりに楽しそうに玉葉妃が笑うものだから、つい皮肉を返してしまった。
いけない、いけない。
失礼なことをいうなら、壬氏までにとどめておかないと。
「先日の里樹妃毒殺未遂騒ぎ、関わっていたのは自死した下女だというのは聞いたか」
こくりと頷く。
玉葉妃はなにかを察したらしく、自分から部屋を出る。
部屋に残るのは、Aと壬氏、そして高順だけだった。
「犯人は本当に自死したのだろうか？」
「それを決めるのは、私ではありません」
虚を実にできるのは、権力者の力である。
判断を下したのは誰かわからないが、少なからず壬氏は関わっているはずだ。
「たかだか下女ごときが、徳妃の皿に毒を盛る理由はあるだろうか？」
「私にはわかりません」
壬氏は笑う。蠱惑的な笑みを使い、ひとをうまく利用する。
残念ながらAにはきかない。そんなことをしなくても、命令すれば断らないことはわかっているはずなのに。
「ところで、明日から柘榴宮に手伝いに行ってもらえないか？」
疑問符をつけたところでなにになる。
Aには「御意」というほか、答えはない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
泉(プロフ) - りこまるさん» 応援ありがとうございます。更新速度はこの先落ちるかと思いますが、温かく見守ってくださるとうれしいです (1月24日 21時) (
レス) id: 81a3c5614f (このIDを非表示/違反報告)
りこまる - 更新速度神ですね✨応援してます！ (1月24日 17時) (レス) id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：泉 | 作成日時：2024年1月22日 7時
