弍 ページ36
今日の茶会の相手は少々、毛色が変わっていた。
相手は里樹妃、同じ四夫人である。
同じ階級の妃同士茶会をするのは珍しく、とくに上級妃であればなおのことだ。
幼い顔立ちの里樹妃は、緊張した面持ちで、侍女を四人連れてやってきた。
あの毒見役もいる。
Aが心配するほど罰は受けていないらしい。
外は寒いので、中で茶会を行う。
宦官を使い、応接間に侍女用にと長椅子を用意させる。
円卓は螺鈿のはいったものである。帳は刺繍入りの新しいものに取り換える。
正直、皇帝が訪れるときにもこんなに気を使うことはないのだが、やはり同性であれば身構えてしまうのは女だからだろうか。
年の功か常に玉葉妃が話しており、里樹妃はおずおずとうなずくばかりだ。
後ろに控える侍女たちは、自分の主のことよりも、翡翠宮の調度のことが気になるらしく、ちらりちらりと部屋中に視線を回している。
毒見係だけは、Aに対するように妃の後ろに立っており、以前、脅してきたAをうかがうように見ている。
(なんだかなあ)
水晶宮の侍女たちといい、ひとを化け物扱いするのはやめていただきたい。
(一見すればごく普通の侍女たちね)
Aは、以前、妃がいじめられていると高順に報告した。間違っていれば少々困るが、幸いなことである。
Aをのぞく少数精鋭の翡翠宮の侍女たちに比べれば、動きは鈍いように思えるが、仕事はやってくれている。まあ、今日の茶会の主人は玉葉妃なので、仕事自体少ないこともある。
愛藍が陶器の壺と湯を持ってくる。
「甘いものは嫌いじゃないかしら」
「好きです」
玉葉妃の言葉に、里樹妃は答える。
壺の中身は、柑橘の皮を蜂蜜で煮たものだ。身体があたたまり、喉も潤う。
(あれ)
甘いものが好きだといったばかりなのに、里樹妃の顔色が変わる。
毒見もなんだか言いたげに茶碗に注がれるはちみつを見る。
(はちみつも駄目なの？)
後ろに控える侍女たちは、なにも言おうとしない。
Aは小さく息を吐き、玉葉妃に耳打ちをする。
玉葉妃は、あららと目を見開き、愛藍を呼んだ。
「ごめんなさい。これ、もう少し漬け込んだほうがいいみたい。違うものだすわ。生姜湯は飲めるかしら」
「はい。大丈夫です」
なんだか声色に元気が戻ってきたようだ。茶を変更して正解だったらしい。
そして、Aの予測も残念ながら正解だったらしい。
ほんの一瞬であるが、つまらなさそうにこちらを見る侍女と目があった。
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泉(プロフ) - りこまるさん» 応援ありがとうございます。更新速度はこの先落ちるかと思いますが、温かく見守ってくださるとうれしいです (1月24日 21時) (
レス) id: 81a3c5614f (このIDを非表示/違反報告)
りこまる - 更新速度神ですね✨応援してます！ (1月24日 17時) (レス) id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年1月22日 7時
