蜂蜜 壱 ページ35
お茶会というのも、立派な妃の仕事である。
玉葉妃もまた、毎日のようにおこなう。翡翠宮でおこなうものもあれば、よその妃に呼ばれることもある。
(大切な大切な探り合い)
Aとしては、お茶会というものがあまり好きではない。
話すのは流行はやりの服や化粧といったもの。
他愛もない会話の中に探り合いを入れる、まさに後宮の縮図がそこに広がっている。
(穏やかそうに見えて、やはり妃ね)
玉葉妃と話すのは、西の中級妃である。
くわしいことはわからないが玉葉妃の実家とは、今後どんな関係になるか重要なところらしい。
朗らかな玉葉妃のしゃべりに多くの他の妃たちは、ふとしたことでこぼすことが多い。
それを文にしたためるのが、玉葉妃の仕事の一つである。
(昨夜はずいぶん遅かったのに、眠くはないのだろうか)
寵妃たる玉葉のもとに、皇帝は三日とあけず通い詰める。
つかまり立ちをはじめた娘に会うためであるが、まあ、訪問の理由はそれだけではないのも言うまでもない。
昼の仕事もおろそかにしないところから、いろいろ元気なことはうかがえる。
茶会が終わると、桜花から大量の茶菓子をもらう。食べないわけではないが、量が多すぎるのでいつもどおり小蘭のもとに向かった。
ときに舌足らずなおしゃべりをする小蘭は、いつもどおり仕入れた噂を話してくれる。
自死した下女のこと、毒殺事件との関連、そしてなぜだか淑妃について。
「まあ、四夫人といっても年齢が年齢だけにね」
玉葉妃は十九、梨花妃は二十三、里樹妃は十四。
淑妃こと阿多妃は三十五、皇帝のひとつ上である。
子を産むのはまだ可能であるが、後宮という制度上、阿多妃はお
今後、国母になることは不可能である。
「だから、淑妃さまの位を下げて、高官のお嬢様を上級妃として輿入れするって話が持ち上がってるみたい」
随分前から上がっている話らしいが、淑妃は皇帝の東宮時代からの妃であり、一度は男児の母になったために、なかなか踏み切れないそうだ。
(亡くなった、前の男児の母親が阿多さまなのね)
このまま梨花妃も、皇帝の子を孕まねば同じようになるのだろうか。
それだけでない、玉葉妃もいつまでも寵愛を受け続けると断言できない。
美しい花もいつかは萎れるものだから。
後宮の花は、実を結ばねば意味がない。
慣れてきたとはいえ、やはり後宮は濁った澱の底にあるのだと思う。
Aは、空を覆う重い雲を見た。
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泉(プロフ) - りこまるさん» 応援ありがとうございます。更新速度はこの先落ちるかと思いますが、温かく見守ってくださるとうれしいです (1月24日 21時) (
レス) id: 81a3c5614f (このIDを非表示/違反報告)
りこまる - 更新速度神ですね✨応援してます！ (1月24日 17時) (レス) id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年1月22日 7時
