参 ページ34
下女の死など、この後宮ではなんの意味も持たない。気づく者がいなければ、自ら望んだ死として罪と共に葬り去られていただろう。
自死か、他殺か。
他人に殺されるなんてまっぴらごめんだ。かと言って自分から死にたいとも思わない。
でも人はいつか死ぬ、だったら___
「...何を考えている？」
黙り込んだAに、壬氏が尋ねる。
「死ぬなら、どんな毒にしようかと」
その物言いがあまりにも寂しくて、壬氏は一瞬言葉を失う。
「...死ぬ気か」
「まさか。でも、もし私が処刑されるようなことがあれば、毒殺にしていただけませんか？」
私が粗相した場合、処分を下すのは壬氏さまでしょうから。
壬氏は目を見開いて、それから悲痛そうに歪めて、視線を下げた。
「なぜそんなことを言う？」
Aはゆっくりと首を傾げ、そしてぽんと手を打った。
頭を下げて、言う。
「すみません、調子にのりました。縛首でも斬首でも文句は言いません」
高順がぱちぱちと二回瞬きをして、壬氏を見る。
「だから、なぜそうなる！」
少し呆れた声で壬氏は言う。
「私が平民だからです。吹けば飛ぶような軽い命ですから」
壬氏は一瞬押し黙って、それからしぼりだすように言った。
「そんなことはしない」
「する、しないではなく、できる、できないの話です」
Aは静かに言った。
壬氏は何も言い返さなかった。言い返せなかった。
その後、風の噂に聞いたのは、死んだ娘が先日の毒殺騒ぎの場にいたことだった。
それらしい遺書も見つかり、自死ということで事件は幕を閉じる。
世の中、誰かの思惑で嘘も真になるものである。
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泉(プロフ) - りこまるさん» 応援ありがとうございます。更新速度はこの先落ちるかと思いますが、温かく見守ってくださるとうれしいです (1月24日 21時) (
レス) id: 81a3c5614f (このIDを非表示/違反報告)
りこまる - 更新速度神ですね✨応援してます！ (1月24日 17時) (レス) id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年1月22日 7時
