誤解 壱 ページ30
そんなわけで、土産を持って翡翠宮に帰ってきたわけであるが、いたのはやたら剣呑な空気を纏う天女のような青年だった。
笑みの向こうに蠱毒のような禍々しい気を感じる。
なぜだろう、やたらこっちをにらんでいる。
性格はなんであれ、美人は美人だ。それににらまれれば、迫力である。
面倒くさそうなのでできるだけ関わらないように頭だけ下げて、自室に向かおうとするが、叶わず。
「執務室で待ってるぞ」
耳元にはちみつのような声が流れる。蜜は蜜でも、鳥兜の蜜である。
後ろで、諦めろと目で語る高順。
困ったようで目を輝かせている玉葉妃。
なぜだかAを責めるような目で見る紅娘。
侍女三人娘も、心配より好奇心が上回っている。
あとで根掘り葉掘り聞かれることだろう。
(一体、なにがどうしたと？)
荷を置き、侍女服に着替え終わると執務室に向かった。
「なにかご用でしょうか？」
部屋には壬氏一人しかいない。椅子に足を組み、卓に肘をついている。なんだか、いつもより態度が悪い気がする。気のせいだろうか、気のせいにしたい、気のせいにしよう。
清涼剤たる高順がいない、つまりまあ、いたたまれない。
「里帰り、いってきたようだな」
「はい」
「どうだった？」
「皆、元気そうでなによりでした」
「そうか」
「はい」
「……」
「……」
「李白っていうのは、どういう男なんだ？」
「はい。身元引受人です」
「意味がわかっているのか？その意味が」
「ええ。身元のしっかりした高官でなければ、引受人にはなれないと」
壬氏は、なんだかものすごく疲れた顔をしている。
当たり前のことはいうなということだろうか。
「簪をもらったのか？」
「義理でいただきました」
他にも本命と思われる簪は何本かあったが、一番高官そうで、根が真面目そうで、かつ面倒くさくなさそうなのが李白だっただけの話だ。
「つまり、義理で貰ったものに、俺は負けたんだな？」
(俺？)
聞きなれぬ一人称に首を傾げる。
「俺もあげたはずなんだが、まったく話は来なかったな」
不貞腐れたような顔をする。
天女の笑みはそこになく、Aとさほど歳の変わらない顔がある。
表情一つでここまで変わるのかと感心する。
どうやら、李白に頼り、壬氏に話が来なかったということが気に食わないらしい。不思議なものだ。面倒事は関わらないほうが楽に決まっているのに。
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泉(プロフ) - りこまるさん» 応援ありがとうございます。更新速度はこの先落ちるかと思いますが、温かく見守ってくださるとうれしいです (1月24日 21時) (
レス) id: 81a3c5614f (このIDを非表示/違反報告)
りこまる - 更新速度神ですね✨応援してます！ (1月24日 17時) (レス) id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年1月22日 7時
