弍 ページ2
偉そうに胸を張る女官は、以前、Aに反発していた一人だった。強気な性格だが、それに根性は付随しておらず、ことあるごとに「お父様に言いつけてやる」と言っていた。
(それで、渾身の花街冗句をお見舞いしたら、滑ったと)
あまりにうるさいので、甘ったるい声で「言いつけられない身体にしてあげようかしら」と言ったら顔を真っ赤にして逃げ出し、それ以来近づかなくなったのだった。
「いないとこ見ると、置いてきたんでしょ。あんな気味の悪い女連れて来たら恥もいいところだものね」
(いつもの厚化粧を思えば当たり前と言えなくもないけれど、でも二か月も一緒にいたというのに)
桜花が飛び掛かりそうなのを残り二人がおさえているのを見ると、そろそろ静かにさせたほうがよさそうである。
Aは桜花たちの後ろにまわり、鼻を手のひらで隠して青い衣を着た侍女たちのほうを見た。
目を細めた侍女の目がAと合う。何かに気が付くと隣の侍女に耳打ちする。
伝言遊戯のように、最後の意張りくさった侍女に届くと、侍女は指先をふるふるとさせ、顔を真っ赤にし、口をあわあわと開いた。
「あ、ああ、ああっ」
「なっ、なによ」
後ろでAが笑っていることも知らない桜花は、いきなり小動物みたいに震える敵対者をいぶかしむ。
「あっ、ああ。も、もうこれくらいにしてあげるわ。か、感謝しなさい」
わけのわからない捨て台詞を吐いて、幕の端に向かう梨花妃の侍女たち。
しばらく呆気にとられていた桜花だが、我に帰ると、
「もう、前からやな奴らだと思ってたけど。悪かったわね、不愉快な思いをさせて。本当は…あんなにも綺麗なのに」
そうすまなそうに言った。
あんなにも、と言うのは、今朝のすっぴんのことだろう。
「気にしていないので。それより、温石かえなくてよろしいですか」
「ええ、まだ温かいし、大丈夫。それにしてもなんでいきなり震えだしたのかしら？」
「さあ、お花摘みにでも行きたかったのでは」
いけしゃあしゃあとAは言った。
ちなみに、現在のAは、その美貌が故に嫉妬からいじめられ身売りに売られて捨て駒の毒見役になった、に加えて、水晶宮で二か月間壮絶な虐めを受けた少女という設定になっている。
困ったことに桜花たちの妄想力は年相応に半端ない。
Aの顔面は嫉妬すらできなくなるほどずば抜けて良い。
それを本人たちが身をもってわかっているはずなのに、どこをどうすればそうなるのか不思議なものである。
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泉(プロフ) - りこまるさん» 応援ありがとうございます。更新速度はこの先落ちるかと思いますが、温かく見守ってくださるとうれしいです (1月24日 21時) (
レス) id: 81a3c5614f (このIDを非表示/違反報告)
りこまる - 更新速度神ですね✨応援してます！ (1月24日 17時) (レス) id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年1月22日 7時
