伍 ページ10
(気が散るわ)
それまで気にならなかったのに、一度認識してしまうと気になってしょうがない。
ちょうど壁についた染みや、小さな虫のように。
(ふむ)
「そうだ小蘭、手出して」
「手？」
不思議そうな顔で小蘭が手のひらを上にして手を出す。
「あ、ごめんそうじゃなくてこっち」
ひっくり返して爪が見えるようにする。
「それで、爪に紅を塗って...」
「A紅持ってたんだ」
「まあ、一応ね」
すべての指に紅を塗り終わると、Aは持っていた布でそれをなでつける。
「よし、完成」
「わあ、きれい...！」
「花街だと結構みんなやってるんだけどね、
「すごーいっ、素敵！」
その様子を見て水晶宮の侍女たちがいそいそと部屋に戻っていく。
自分たちの爪を眺めながら。
(あとで梨花さまや玉葉さまにも教えよう)
上級妃がやることはすぐにみんな真似する。
流行りに夢中になればこっちのことは忘れるだろう。
(でも、残念)
自分の爪を見る。
昨日暇つぶしにした爪紅。
うっすらと上品に紅く染まっている。
(鳳仙花と片喰があればこんな風にきれいに染まるのだけれど)
でもその紅は昨日使い切ってしまった。
Aは自分の左手の小指を見る。
目立ちはしないが、爪が少し歪んでいるようにも見えた。
「........」
Aはしばらくの間、何も言わずそれをじっと見つめていた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「ねーA、だいぶつぼみついたの増えてきたけどどうするの？
全然色が...」
「大丈夫。小蘭、葉をむしるの手伝ってくれる？
ここからが、最後の仕上げよ」
ぷちぷちと葉をむしりながら、Aは口角を上げた。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
