弐 ページ7
「青い薔薇、ですか」
「ああ、ひどく興味をお持ちの方がいてな、今度の園遊会で青い薔薇を愛でようという話になって」
「私に探せと?」
「ああ、何か知らないか」
「何かといわれましても...」
Aは野次馬で来ていた侍女三人娘が紅娘に連れていかれるのを横目で見ながら言う。
紅娘は三人の首根っこをつかんで引きずって行く。手は二つしかないのに三人分まとめてひっつかんでいけるのは、お見事としか言いようがない。
「私は薬屋なのですが」
「なんとなくできそうだと思って」
にっこりと笑う壬氏。
「ふふ、その様子だと"この子なら何か知っている"と誰かに言われたのではなくて?」
玉葉妃が部屋に入ってきて穏やかに微笑みながらそう言う。
「それもあります」
と、壬氏。
(青い薔薇、ねえ)
薔薇について知識がないわけではない。
花弁から得られる精油は、美肌効果があると妓女に人気だ。
小姐たちにと、作ったこともあるが___
「ご存じですか、壬氏さま。
"青い薔薇"は"不可能の代名詞"とまで言われているんです。
これまでどれだけ愛好家が手を尽くしても作れなかったのですよ」
「そうはいうけどな、
見たという人がいるんだ、青い薔薇を」
Aは息をのんだ。
「この宮中で、ですか」
「ああ、しかも一人でなく複数の人が見たそうだ」
Aは目をつむり、顎に手をやる。
「それは、その時期たまたま
「んなもん流行ってたら国が亡ぶわ!」
食い気味に否定する壬氏。
玉葉妃も、玉葉妃について戻ってきた紅娘も、驚いたように目を見開く。
高順が一つ咳払いをした。
壬氏は少しきまずそうに黙って、それからAの手を取ると、
「.....無理だろうか?」
きらきらをまとって蜂蜜の声でそう尋ねた。
Aは背筋に悪寒が走るのを感じた。
非常に不愉快である。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました!続き楽しみにしてます! (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉 | 作成日時:2024年2月16日 18時