参 ページ48
「甲斐甲斐しく世話をしているようで感心だ」
くつくつと煮干しをゆでる音が部屋に響く。
「主命ですから。猫は嫌いではありませんし」
すごく好きなわけでもないですが、と付け加えると、壬氏は目を丸めてAを見る。
「その名前からして好きそうだが」
「...よくいわれますが、...そういう壬氏さまこそお好きそうですね」
後半は壬氏の手元を見ながら言う。
猫は壬氏の持っているひもの房飾りを手で触ったり足で蹴ったりしている。
「あのふたりほどじゃない」
壬氏は顔を上げて年配の宦官たちの方を見る。
二人は湯の中を覗き込みながら、煮干しについて「どうですかにゃ」「まだかたいですにゃ」と話している。大丈夫だろうか。
「具体的にどこがいいのかわからないな」
呆れたように二人を見ながら、壬氏は言う。
「私もです」
Aも言う。
「でも猫好きによると、何を考えているのかわからないところがいいようで」
ぴくりと壬氏が反応する。
「見ていると飽きず目が離せなくなり、」
「うむ」
「そのうち触りたくなるとか」
「...ほう」
少し間が開いて、壬氏は視線を猫からAへとうつし、相槌をうつ。
「普段そっけないくせに餌をもらうときだけ愛想がよくなるのが腹立たしいですが、そこまで来るとあきらめて、許してしまうらしいのです」
「あ、ああ...」
(でも、接吻したりはさすがに不衛生だと思うのだけれど)
そんなことをAが思っていると。
すっと横から壬氏が手を伸ばして猫を抱き上げ、顔の上にもふ、と乗せる。
「......なにしてるんですか、壬氏さま」
「...何か、わかった気がする」
何がわかったんだか。少なくとも高貴な方のやることではない。
「そういえば、結局この猫がどこから来たのかはわからなかった」
「親猫も見つからずじまいですか」
「ああ、宮中に出入りする荷馬車の中にでも入りこんでいたんだろう」
顔から猫を下ろし、また房ひもで猫と遊び始める壬氏を見て、年配組は「何を遊んでいるのですかにゃ」「ずるいですにゃ」とぶつぶつ言っている。本当に大丈夫だろうか。
「あと、主上直々に官職を賜ることになったぞ」
「官職、ですか。猫が？」
「ああ、医局の鼠取り"盗賊
今後もよく面倒を見てやってくれ」
毛毛。
(毛毛と、A...解せぬ)
呑気ににゃあと鳴く猫を見ながら、Aはため息をついた。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
