弐 ページ47
「おお、ずいぶんきれいになったねえ」
猫を受け取って数日後。
薄汚れていた部分もすっかり真っ白になり、黒と茶色、三色の毛並みがくっきり見える。
「体力もついてきたみたいなので、洗いました。乳だけじゃなく鶏肉をほぐしたものも食べられるようになりましたよ」
やぶは皿をぺろぺろと舐める子猫を見ながらほわほわと癒されている。聞いているんだかいないんだかわからない。
「外に放り出すならここまでする必要もないのですが」
「仕方ないよねえ、主命だもの」
"その子猫、翡翠宮で飼うことにした。朕が許可する。
鈴麗にせがまれては断れん、鈴麗に触らせてやってもいいか？"
"あ、いえ...小さくても獣です、つめの手入れをして蚤の始末もしませんと"
"そうか、では引き続き世話を頼む。猫と、A...ぴったりではないか"
Aは数日前の会話を思い出して苦笑する。
(排泄のしつけ、爪の手入れ...軽く言ってくれる)
ぱちぱちと鋏で猫の爪を切る。
おとなしい猫でよかった、爪切りを嫌がって暴れられたら、どうしようもなかった。
「子育ては順調か？」
そんな声がして顔を上げると、見慣れた天女の顔。
「おお、綺麗になったな。そろそろ公主に見せてもいいんじゃないか？」
壬氏は子猫を覗き込んで、そんなことを言う。
その後ろで高順が何かそわそわしている。
「噛みついたり、引っかいたりしたときの対処はできかねますが」
「そう細かいことを言うな」
「責を負うのはその場にいた者ですよ」
壬氏とAが話す横で、高順はいそいそと懐から煮干しを取り出して子猫に近づける。
猫が匂いにつられてふんふんと小魚を嗅ぐのを見て、こちらの男もほわほわと癒されている。
「高順さま、そのままでは硬いと思うのでゆでましょうか？」
「そ、そうですね！」
(こういう時はきびきび動くのよね)
鍋に湯を沸かし始めたやぶを見て、Aはそんなことを思う。
隣では壬氏が猫に手を近づけ、おなかのあたりを撫でている。
それにしてもずいぶんと人懐っこい猫である。
「雌か」
壬氏が猫を見ながら言う。
「ええ、去勢する必要がなくてよかっ___」
そこでAははっとして言葉を止める。
いけない、これは宦官に対する禁句中の禁句であるのに。
「...申し訳ありません」
「別にいい」
壬氏は気まずそうな顔で言った。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
