散歩 壱 ページ44
「公主のお散歩の許可が下りたのですか」
「ええ、翡翠宮の中だけじゃ狭くなってきたから、お伺いしてみたの。
もうあちこち走り回るんだから」
翡翠宮。
主上の貴妃・玉葉妃は母の顔で微笑み、元気な娘を抱き上げながら言う。
「うちから西の桜桃園までなんだけど、どうかしら」
「健康を考えるなら、室内だけで過ごされるより断然良いと思います」
Aも微笑みながら答える。
子供は好きな方だ。
泣かれたり理不尽に暴れられたりすると厄介なものだが、幸いおおらかな玉葉妃から生まれ、温かく家庭的な翡翠宮で育てられている鈴麗公主にはそのような様子はない。
「護衛として宦官が二人つくけれど、紅娘と一緒にAもついて行ってくれないかしら」
「わかりました」
「Aは植物に詳しいから、色々教えてあげて」
「玉葉さま、それは...ろくなこと教えませんよ」
紅娘が口をはさむ。
その自覚がまったくないわけではないAは、黙っておく。
「あら、役に立つと思うわ。どこに嫁ぐかわからないでしょ」
(...相変わらず、食えないお方ね)
Aは玉葉妃の翡翠の眼を見ながら眉を上げる。
＿＿いずれ、公主も知るようになるだろう。
なぜ大人たちが恐れ多いとひざまずくのか。
妬ましげな顔をする女がいるのか。
立場を考えれば、あと十年もすればどこかへ嫁ぐ可能性もある。
臣下に降嫁するならいいが、他国に渡るかもしれない。
そうなれば、後宮での争いに否応なしに巻き込まれる。
かつて玉葉さまが毒を盛られたように。
薬や毒の知識はあって困るものではない＿＿玉葉さまはそう考えているのだろう。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
