肆 ページ41
「上級妃の方々には直々に本を見せながら教えられましたが、他の方にも機会があっていいと思うんです」
Aの訴えに押されてか、壬氏は腕組みをしてうなる。
「言わんとすることはわかるが...」
そこに、横から手が伸びた。
高順が、机の上に積み上げられた本を一冊手に取り、ぱらりと開く。
「...これは、ずいぶん綺麗に作られていますね。
印刷も紙も質がいい」
なんだ、この宦官めずらしくもそういうことに興味があるのかと思ったら、そういうことか。
Aはこれはいけるかもしれないと思いながら口を開く。
「こういう本は嫁入り道具にも使われますし、絵が中心なので文字が読めないものにも買われますから、需要があるんです」
「ふむ...この絵は版画か？」
「木版ではなく、金属を彫ったものだそうです」
「ほう」
「だから、これは多くの方に読んでいただきたいな、と！」
「それとこれとは話が別だ！」
壬氏は呆れたようにそう言ってから、ふと何か思いついたように本に向き直った。
「絵があれば文字が読めなくとも、か」
ぺらりと本の頁をめくる。
そして、後ろに立つ従者の視線にはっとする。
「...興味がおありでしたら、一冊いかがです」
高順がすっと本を差し出す。
「違う！」
壬氏は慌てて否定する。
そして、頭をぽりぽりとかいてAに向き直り、
「今回は見逃してやってもいい」
少々頬を赤らめたままそう言う。
「いいのですか」
Aの顔がぱっと明るくなる。
「その代わり、
これを販売している店を教えてくれ」
「.......」
数秒の沈黙。
「...ですから、欲しければ一冊とは言わず数冊」
「だから違う！」
食い気味に否定する壬氏。
「思いついたことがあって、印刷技術を知りたいだけだ！
それだけだ！」
あわあわとしているが、そちらの方が怪しいということにこの男は気が付いていないのだろうか。
「...どうぞ」
Aは紙に店の名前を記して壬氏に差し出す。
「...本当だからな」
そう念を押されるが、Aとしては別にどちらでも良い。
何を思いついたのかは知らないが、
(まあ、壬氏さまならその気になれば実物も見放題だろうし)
女はもちろん、男のそれも。
「あ、A。
きわどいものについては検閲の必要があるかと」
高順が思い出したように言って、Aはええ、と声を上げた。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
