弐 ページ39
「しかし、よくこんな消毒法を知っていたな」
壬氏はちゃぷ、と酒精の入った瓶を揺らす。
「西方では強い酒精を使って消毒すると聞いたものですから」
「西方?」
壬氏は首をかしげる。
「ええ、
「西方の医術だと?」
「ええ、結構長い期間留学していたそうで」
「留学って、よほど優秀でなければ国の選考を通らないだろう」
「ええ、養父はすごいんです」
Aはにっこりと嬉しそうに微笑んで言う。
いつもの醜女化粧をしているが、それでも化粧の下の気品と愛らしさが空気に染みる。
「...そうか、今その方はどこにいるんだ?」
「私が生まれる前から、ずっと花街で薬屋をやっておりますが」
「そんなに優秀な人がなぜ...」
壬氏が怪訝な顔をする。
「才はあっても運がないのでしょうね、なんせ陽の気をはらわれてしまってますし」
壬氏が目を見開く。
(...
Aはばつが悪そうに左腕をさする。
「...それは宦官だったということか」
「そうですけれど」
「宦官で、医官...?」
壬氏が考え込むように顎に手をやったとき。
「失礼します」
二人の宦官が、医局の扉を開いて大きな荷物を運び入れてくる。
「お荷物、お持ちしました」
どさりといかにも重そうな音を立てて、荷物が床に置かれる。
「?なんだその荷物は」
壬氏が宦官たちに近寄る。
「壬氏さま!これは、こちらの下女に届けるようにと」
その言葉に、Aははっとする。
「壬氏さま、お茶を淹れますのでどうぞ座ってください」
中身を見られるわけにはいかない。Aは必死に壬氏を荷物から離れた机に誘導する。
「何が入っているんだ?」
「実家からの荷物です、大したことは」
「ふうん?」
信じていないようだ。まだ興味ありげに大きな箱をちらちらと見ている。
「し、下着が入っておりますので」
Aは少し顔を赤らめて言う。
壬氏はたちまち耳まで赤くなって、「そ、それはすまん」と返した。
(...よかった、ごまかせた)
そう心の中で息をついたのもつかの間、
「A。
大人が二人がかりじゃないと運べない下着って、何製です?」
__主のようにころっと騙されてはくれない高順が、嫌みのない澄んだ目でこちらを見ていた。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました!続き楽しみにしてます! (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:泉 | 作成日時:2024年2月16日 18時