弐 ページ33
「っ、何をやっているんだ！」
「壬氏さまこそ、なぜここに？」
女＿＿もとい、Aが目を丸くして壬氏に尋ねる。
壬氏はAをしっかりと立たせると、口を開いた。
「お前、ここに来るときに誰かに会わなかったか」
「はい？...ああ...」
そういえば、誰かからどこにいくんだと声をかけられた。
お気になさらずと答えてその場を後にしたはずだが。
「親切な衛兵はお前の声に聞き覚えがあって、俺に話を通してきたんだ」
壬氏はAの頭に手をぽんと置く。
「手間をかけさせるな」
Aはすすすと後ずさると、顔をそむけた。
「お前は地味にやってるつもりでも、まわりはそう思ってないことは覚えておけ」
壬氏が言う。
「でも、夜ですし、来るときは頭巾かぶってましたし...」
言い訳のように口を尖らすA。
こっそりやっていたのに。
衣も装飾品も最低限、髪は結ってすらおらず、鮮やかな紫色の薔薇を一輪、挿しているだけである。
「夜だが月の光で十分見えるだろう、それに＿＿」
口をつぐんだ壬氏を怪訝に見上げるA。
壬氏は何やら顔を赤らめて、もどかしいような怒ったような顔でAをちらりと見る。
(言ってくれなければわからないのだけど)
なんだろう、あのまめな従者もだが、表情で察してもらおうとするのはやめてもらいたい。
あいにく、人の感情を読み取るのは苦手な方だ。
咳払いをする壬氏。
「で、お前はここで何を？」
「花街では身請けされた妓女を見送る際、踊るんです。その衣装が小姐から送られてきまして」
ふわりと衣をはためかせ、Aは答える。
「花街の花」が「誰か一人の花」になるとき、他の花たちは見送るために舞を踊る。
身請けは、祭り。花街は眠らぬ夜の城、夜通し宴が続く＿＿
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
