ねこあし 壱 ページ27
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「う...」
「お目覚めになりました？」
ずきずき痛む頭をおさえながら、羅漢は起き上がる。
「その声は、...梅梅？
ここは？」
「緑青館ですよ、宮中の貴人の使いという方が連れてこられました」
「そうか、」
「すごい顔色でしたわよ、青いというか、赤いというか」
「まさかあんな強い酒だと思わなくてね。
...また君に面倒をかけてしまったな」
「面倒だなんて。
あなたは緑青館に相場の倍以上の賠償金を支払って、客として来られていたのですよ」
「まあ、...それでも君以外に相手してくれる女はいなかったがね。
君はいつも鳳仙のそばにいて、たまに私が将棋を教えてやった。
それで気を使ってくれていたんだろう？」
「筋をほめられるとうれしかったものですわ。
さ、どうぞ」
梅梅は羅漢に何か液体の入った杯を手渡す。
「ああ、ありが＿＿」
羅漢はそれを少し口に含んで、ぎょっとして細い目を見開く。
「うっ、な、なんだいこりゃ！？
苦いにもほどがっ」
「Aが作った酔い醒ましだそうですよ」
梅梅はくすくすと笑う。
「Aが...」
羅漢は少しうつむいてつぶやいた。
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「赤子なんていないと何度言ったらわかるんだい！帰んな！」
もう何度目になるかもわからない、箒でたたかれて追い返されて。
(全く恐ろしい婆だ、どこにあんな力があるんだか)
そんなことを思いながら傷のついた額を手巾で拭っていると。
深いつやつやした黒髪の幼い子供が羅漢の前を横切って座り込み、陽を知らないかのように真っ白い小さな手で、何やら雑草をつみはじめた。
「嬢ちゃん、なにやってるんだい？」
「おはなつんでる」
子供は柔らかく愛らしい声で羅漢の質問にそう答える。
将来はどんな美しい声になるのだろうと考えさせられる。
「へえ、誰かにあげるのかい」
そう尋ねると、幼女はふせていた顔を上げた。
幼いながらにも整った顔立ちの＿＿もっとも、羅漢は顔の良し悪しなどわからないが、それでもこのような顔が"美しい"のだろうと思わされるような＿＿そんな娘だった。
だが、羅漢が目を引かれたのはそこではない。
＿＿めったにないはずの、紫色の澄んだ瞳。
そして、汚れのない柔い紅葉のような手の、一点の違和感...
左小指が、ほんの少し欠けている。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
