鳳仙花と片喰 壱 ページ24
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「はははっ...負けたのなんて、何年ぶりだか...」
笑い転げる私に、笑わずの妓女はふんと小さく鼻を鳴らした。
「梅梅」
「はい、
「将棋盤を持ってきて」
「はい」
彼女がこちらに向き直って、
「次はお得意の将棋で」
紅の塗られた唇が、そう言って。
＿＿＿人とは、こういう顔をしているのか、と。
まるで人を寄せ付けない、鳳仙花の実のように触れたらはじけそうな、
そんな紫色の眼に引き込まれながら、私はそんなことを思った。
「君、...君、名前は...」
「_____
淡く色づいた爪紅の指が、将棋の駒を一つつかんで盤に置いた。
＿＿＿鳳仙という女は、妓女の誇りというものだけを固めたような女だった。
妓楼で生まれたせいかもしれない。
店に会いに行くこと何回目だったか。
"母は妓女ですか"と尋ねる私に、
彼女は"母はいません、私を産んだ女ならおりますが"と、そう言った。
妙な言い回しだが納得した。
花街で妓女は母にはなれぬ。そういうことだろう。
鳳仙の部屋の花瓶には、いつも二種類の同じ花が生けられていた。
それは鳳仙花と、あと一つの小さな花はねこあし＿＿
生薬にも使われて、鳳仙花と同じように実が成熟すると種がはじけ飛ぶらしいと。
面白いなと笑う私に、彼女はつんとすましたままで、
"次はいつ来られますか"___そう尋ねて。
定型の販促の文しか送らない女が、珍しい、そう思ったものだ。
才能ある妓女はある程度人気が出ると売り惜しみされる。
鳳仙もまたその一人だった。
対応がきついので万人受けはしないものの頭がよく、一部の好事家に受けていたらしい。
値は吊り上がり、三月に一度会うのが精一杯だった。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
