参 ページ19
「何を言うかと思ったら、それだけでいいのかい？」
笑いながら羅漢は言う。
「あと一つ。高順さま、よろしいですか」
高順が、五つの杯が乗せられた盆を持ってくる。
羅漢がそれを物珍しそうに眺める。
「酒かい？」
「はい。これだけでは緊張感がありませんから、」
Aはそう言って懐から小さな紙の包みを五つ取り出す。
中身は白い粉だ。
それを一つずつ、杯にさらさらと入れていく。
「何をしている！？」
壬氏が声を上げた。
「少しだけなら、薬です」
Aはそれをすべての杯に入れ終わると、にっと笑った。
「一杯二杯なら大したことはありませんが、三杯分飲めば案外ちゃんとした毒になります」
Aは羅漢の顔を見る。
心なしか、細い狐目がひそめられて、顔をしかめているようにも見える。
「五回勝負、先に三回勝った方の勝ちです。
一回勝負がつくごとに勝者が一つ杯を選び、敗者が飲む。
そしてどんな理由があろうとも、試合を放棄したら負け＿＿
どうでしょう？」
「...いいだろう。
では、勝負と行こうか」
羅漢はいつのまにか笑顔に戻っていた。
「すみません、士の動きってなんでしたっけ」
「斜めに一歩ずつだな、九宮は出られない」
「なるほど」
「ああ、砲はそこには動かせないよ、一つ駒を挟まないと取れないからね」
「あ、そうなんですか」
「なあ高順、薬屋はもしかして...」
対戦の様子を見ていた壬氏はそう耳打ちする。
「ええ、基本的な規則さえもあやふやなようです」
高順も心配そうにAを見る。
仕方ないだろう、Aは妓楼で碁は打ったが将棋はしてこなかった。
だから今、行き当たりばったりともいえる勝負をしているのだ。
駒の動きを覚えながら、顎に手を当てて考えて_____
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
