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   弍 ページ18

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「先攻と後攻、どちらがいいかね?」


目の前の狐顔の男は、Aにそう尋ねてくる。




高順に呼べと頼んでから半時(一時間)もたたないうちに、男は来た。


将棋の対戦を申し込んで、今は将棋盤を挟んで二人向かい合わせで座っている。


それを壬氏と高順が見守る。






Aは男の顔を無表情で見ながら、口を開いた。



「その前にまず、規則(ルール)と賭けの代償を決めませんか」

「ああ、かまわないよ」



「お、おい薬屋...」
壬氏が焦ったような表情で話しかけてくる。

「なんですか」


「羅漢どのと将棋で勝負、しかも賭けなんて無謀だぞ!
羅漢どのは将棋では負けなしで有名なんだ!」


「知ってます、だからこの勝負なら乗るかと思って」


「何のために!?」



羅漢はそんなやり取りを笑顔で見ている。


「少しくらいは手心を加えてあげるよ。
象か、砲か、どれがほしい?」


「どちらもいりません」

もらっとけ、という壬氏の小声は聞かなかったことにして、Aはそう答える。


「いいのかい...

私が勝ったら、うちの子になってもらう...と言っても?」



「いいでしょう。


...いいですよね?壬氏さま」




もちろん年季が明けた後の話です、とAは付け足す。


鋭い紫色の眼光に、壬氏は何も言えない。



それを肯定ととらえ、Aは羅漢に向き直る。



「雇用中ですので、年季が明けてからになりますゆえ、当分後になりますが」


「...雇用中、ねえ。
私はそれで構わないよ。
これまで、どれだけ不確かなものを待ち続けたかを考えたら、大したことじゃない。

ようやく、私のもとに来る___」



「...薬屋...」

壬氏は心配そうな顔でAを見る。



「それで?君が勝ったら?」


「では、私が勝ったら緑青館の妓女を一人身請けしてください。
やり手が年増の妓女を片付けたがっていますので」


私もこのくらいの営業はしないと怒られてしまうので、とAは言う。


実際、何年もかけて育て上げたのに、一月で辞めるなんてどれだけ親不孝者なんだと恨みがましい目で婆ちゃんに見られる。
Aとしては別に(壬氏が)お金を払ったんだからいいだろうと言いたいところだが、まあ営業をしない理由というのもないわけで。

   参→←爪紅 壱



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(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました!続き楽しみにしてます! (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月16日 18時

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