拾壱 ページ16
「白い薔薇の茎を色のついた水につけ放置した。それだけです」
そうすれば茎から水ごと色素が吸い上げられ、白い花びらを染め上げる。
だから、薔薇が吸い上げる水ならばどんな色でも問題なかった。
ただ、葉の色はどす黒く汚くなるため、花瓶に生ける際、白い花以外すべてむしっておいた。
同じ花瓶にすべて生けたように見える薔薇だが、そのひとつひとつの茎の根元は、色つきの濡れた綿で包まれ、油紙で固定していた。
さらに、皇帝が色つきの薔薇を珍しがって、皆の前で花瓶から抜き取ってしまうことのないよう、
前夜、翡翠宮をおとずれた皇帝にはすでに種明かしをしておいた。
誰もが、一番最初に秘密を教えてもらえるのはうれしいことらしい。
髭を触りながら、面白そうにAの話に聞き入っていた。
帝に献上したものにわざわざ手を出す者はいないだろう。
官たちには、
「じゃあ、以前目撃された青い薔薇も？」
「誰かが同じように青い色水を白薔薇に吸わせていたんでしょう、
＿＿どっかの暇人が、どこぞの女を口説くためにも」
壬氏はそうか、と頷くと、なにやら思い出したように袖元から取り出した。
一輪の薔薇である。紫色に色づいた、綺麗なつぼみの＿＿
「お前の瞳の色に似ていたからな、つい」
壬氏は薔薇をAに手渡した。
Aは受け取って怪訝な顔で見上げる。
「これは、お前が持っていてくれ。
花開いてから
「そうですが。...ありがとうございます」
一応、お礼を言っておくA。
壬氏は少し照れたように「ああ」と言ってから、Aの手に視線を止めた。
「...めずらしいな、お前が爪を染めるとは」
ああ、とAは自分の手を見る。
薄付きの上品な爪紅。
「ええ、似合いませんけどね」
「いや、そんなことはない。すごく＿＿＿」
「A」
壬氏の言葉の途中だったが、Aは自分を呼ぶ声にそちらを振り返る。
そこにはまめな従者こと、高順がいた。
「場所は整いました。あとは本人だけですが」
ああ、そうだ、Aは高順に頼みごとをしていた。
壬氏は何も聞いていないので、不思議そうな顔をして二人の顔を交互に見る。
「ありがとうございます、では、...私の名を出して呼び出してください。
私の誘いとあらば断らないはずです、あの男は」
Aは言った。
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泉(プロフ) - めうさん» ありがとうございます。のんびり更新になりますが、楽しんでいただけると幸いです。 (3月27日 20時) (
レス) id: 9196073726 (このIDを非表示/違反報告)
めう(プロフ) - とっても面白くて一気見してしまいました！続き楽しみにしてます！ (3月22日 21時) (レス) id: 3ab55db304 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月16日 18時
