新淑妃 壱 ページ41
後宮の調和には常に目を配らなければならない。
なぜなら、妃たちの力関係は、時にこの花園のみならず、
「梨花さま」
壬氏は今、水晶宮の応接間にいた。
「この頃はすっかりお元気になられて安堵しております、お変わりはありませんか」
「ええ、変わりなく。主上にも気にかけていただいて申し訳ないくらいですわ」
ゆったりと微笑み、梨花妃は言う。
玉葉妃についで主上の通いが多い梨花妃は、病も癒え元の華やかさを取り戻している。
「新しく入内した
「楼蘭妃....ですか。
なんだか、よくわからない方ですね」
梨花妃は首をかしげてそう言った。
水晶宮を出て、金剛宮へ向かう。
「里樹さま、この頃はつつがなくお過ごしで？」
「は、はい...変わりなく...」
幼い妃は頬を染め、うつむきがちに話す。
「阿多妃が後宮を出られて、落ち込まれていないかと心配しておりました」
「...寂しいです。あの、新しい淑妃の」
「楼蘭妃ですか。彼女がどうか？」
「あ、あの人がどうというわけじゃなくて、阿多さまのいらっしゃった頃の柘榴宮とは全く変わってしまったので、阿多さまの面影が塗りつぶされてしまったようで、それが悲しくて」
(ふむ)
壬氏は顎に手を当てた。
里樹妃の言う通り、阿多妃のいた柘榴宮はすっかり様変わりした。
無駄なくさっぱりとしていた宮は豪奢な調度品であふれている。
そして、
「壬氏さま、ご機嫌麗しゅう」
「それは西方の衣装ですか、お似合いです」
「ありがとうございます」
(こういうことか)
楼蘭妃はたくさんのひだや
主上は楼蘭妃のもとへ通ってはいるが、
"昨日は胡服、今日は南方の羽飾り、と毎回違う女を見ているようでな..."
混乱する、と髭を触りながら顔をしかめていた。
それでも十日に一度は通うことにしているらしい。
それが皇帝としての務めと言うものだ。
楼蘭妃の父は先帝...というより、先の皇太后に寵愛された高官だ。
興が乗らないからと言って、無下にするわけにもいかない。
とりあえず、今は新しい妃が入ったことによる混乱はなさそうだが。
(これが玉葉妃の解任でどう変わるか、薬屋はちゃんと見てくれているだろうか)
壬氏は翡翠宮のある方角を眺めた。
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月2日 10時
