参 ページ40
A。
いや、別に彼女に女らしさがまったくないわけではない。
現に、前に妓楼で見た姿は見ているこちらが恐ろしくなるほどの艶めかしさがあった。
でもそれが彼女の本質ではないことくらい、高順もわかっている。
Aは、仕事はやるとやったらやる真面目な人間だ。
妓女も職、だからこそ、その道での最高の仕事をしていただけに過ぎない。
後宮で初めて見た、女の、男のという論争をも超越する、凛とした芯のある美しさ。
でもどこかそっけなくて、つかめなくて、不思議な感じがする気まぐれな猫のような魅力。
謎が解けた時の嬉しそうなきらめきも。
だからこそ、主も気に入ったんだ＿＿＿＿
「おい、お前、大丈夫か」
怪訝な顔で見てくる主の顔に、高順は我に返る。
「呼びかけても返事がなかったぞ」
「申し訳ありません、少し考え事をしていまして」
「考え事？」
「ええ、早く暇な身になって孫を抱きたいものだなあと」
...悟られないよう。にっこり笑って、誤魔化す。
「あなただって、馬閃と同じ十九なのですから」
主はうぐ、と黙り込む。
「...努力する」
何も言い返せないようだった。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「薬屋、足の具合はどうだ？」
壺を布で磨いていたAに、後ろから壬氏は声をかけた。
「水蓮さまが座り仕事を振ってくださっているので、問題なく。なんです？」
「仕事だ。後宮に行ってほしい。
まだどこにも漏らせぬ話だが、玉葉妃が懐妊したかもしれない」
Aは目を見開いた。
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月2日 10時
