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翠苓は、こう言っていた。
"ここに朝顔を植えるわ"
曼荼羅華。別名、朝鮮朝顔。
毒性が強く、誤って口にすれば幻覚や悪寒を引き起こすが、その一方で麻酔薬としての薬効を持つ。
「...では、ほんとにその毒か確かめてみましょうか」
「確かめる？どうやって」
尋ねたのは壬氏だ。
「こうやって！」
Aはそばにあった大きな
そのまま持ち手に力をこめる。
「な、何を！」
「黙って見ていてください！」
(彼女は何と言っていた？)
"＿＿＿蘇りの薬。"
ばこっと音を立てて蓋が開いた。
壬氏が目を見開く。
そこに寝かせられていたのは、翠苓ではなかった。
目の細い、のっぺりした、全く違う顔の男。
「翠苓...じゃ、ない」
呆然と医官が言う。
「確かに死んでいたのですか」
「あ、ああ...
私がどんな間抜けでもわかる、確かに死んでいた。
脈も呼吸もなく」
棺によろよろと駆け寄り、座り込む医官。
「あなたは翠苓に好意を抱いておられましたね」
「そ、それが今関係あるか！？
そんなことで間違えたりは」
「ええ、でもそれも彼女の企みに織り込み済みだったのだと思います。
あなたなら死体を丁寧に使い、切り刻むこと...つまり、解剖もしない、と。
いいように利用されましたね」
その言葉に医官が恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にする。
「...彼女はよく医局に出入りしていたようですし、必要なものを持ち出している可能性があります。
医局にある薬の在庫数を調べれば、何を使ったかわかるかと」
「それはわかったが、なぜ別の遺体を棺に入れたんだ」
壬氏が怪訝な顔で問う。
「燃やす際に中身が空では、持った時から違いますから、怪しまれるでしょう？
新しい棺の中に死体を入れて持ち込み、ここですり替えたのでしょう」
Aは部屋の隅にある空の棺の山を指さす。
「では棺の業者もあの一件にかかわっていると」
「ええ、おそらくは。あるいは、仲間の者が業者になりかわったのかもしれません」
Aは頷いて答えた。
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作者名：泉 | 作成日時：2024年2月2日 10時
